著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 田原 麻衣子 川原 陽子 真弓 加織 五十嵐 良明 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-163, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】近年、生活空間において“香り”を楽しむことがブームとなっており、高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤や香り付けを目的とする加香剤商品の市場規模が拡大している。それに伴い、これら生活用品の使用に起因する危害情報も含めた相談件数が急増しており、呼吸器障害をはじめ、頭痛や吐き気等の体調不良が危害内容として報告されている。本研究では、柔軟仕上げ剤から放散する香料成分に着目し、侵害受容器であり気道過敏性の亢進にも関与することが明らかになりつつあるTRPA1イオンチャネルに対する影響を検討した。【方法】ヒト後根神経節Total RNAよりTRPA1 cDNAをクローニングし、TRPA1を安定的に発現するFlp-In 293細胞を樹立した。得られた細胞株の細胞内Ca2+濃度の増加を指標として、MonoTrap DCC18 (GLサイエンス社)を用いて衣料用柔軟仕上げ剤から抽出した揮発性成分についてTRPA1の活性化能を評価した。また、GC/MS分析により揮発性成分を推定した。【結果】市販の高残香性衣料用柔軟仕上げ剤を対象として、それぞれの製品2 gから抽出した揮発性成分メタノール抽出液についてTRPA1に対する活性化能を評価した。その結果20製品中18製品が濃度依存的に溶媒対照群の2倍以上の活性化を引き起こすことが判明した。さらに、メタノール抽出液のGC/MS分析結果より、LimoneneやLinallolの他に、Dihydromyrcenol、Benzyl acetate、n-Hexyl acetate、Rose oxide、Methyl ionone等の存在が推定され、これらの中で、Linalool 及びRose oxideがTRPA1を活性化することが明らかになった。これらの結果より、柔軟仕上げ剤中の香料成分がTRPイオンチャネルの活性化を介して気道過敏性の亢進を引き起こす可能性が考えられる。
著者
Sugiyama Hideo Terada Hiroshi Isomura Kimio IIJIMA Ikuyo KOBAYASHI Jun KITAMURA Kiyoshi
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.417-425, 2009-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
2 15

The isotope <sup>210</sup>Po was suspected of being involved in the death of a former Russian intelligence agent in 2006 in the UK. Although human exposure to this natural radionuclide in foods is estimated to be high, few studies are available. UNSCEAR Report 2000 does not contain data on <sup>210</sup>Po concentrations of foodstuffs in Japan. We analyzed samples of the everyday Japanese diet cooked with foodstuffs purchased at supermarkets in 7 major domestic cities in 2007-2008. <sup>210</sup>Po was quantified by alpha spectrometry and natural radionuclides such as <sup>40</sup>K by gamma spectrometry. The daily intake and committed effective dose of <sup>210</sup>Po, <sup>40</sup>K, and other natural radionuclides for Japanese adults were calculated. Daily intake was 0.34-1.84 (mean &plusmn; σ : 0.66 &plusmn; 0.53) and 68.5-94.2 (81.5 &plusmn; 8.5) Bq/d and the committed effective dose was 0.15-0.81 (0.29 &plusmn; 0.24) and 0.16-0.21 (0.18 &plusmn; 0.02) mSv for <sup>210</sup>Po and <sup>40</sup>K, respectively, comprising a high percentage of the total exposure. The total of the mean committed effective dose for the two nuclides (0.47 mSv) was higher than the annual effective dose from ingestion of foods reported by UNSCEAR 2000 (0.29 mSv). The mean committed effective dose of <sup>40</sup>K in the 7 major Japanese cities was comparable to the global average (0.17 mSv). The dietary exposure of Japanese adults can be characterized by a higher <sup>210</sup>Po contribution than in other countries. Of the total daily dietary <sup>210</sup>Po exposure (13 food categories excluding water) for adults in Yokohama, about 70% was from fish/shellfish and 20% from vegetables/mushrooms/seaweeds, reflecting preferences of Japanese to eat a considerable amount of fish/shellfish containing high <sup>210</sup>Po concentrations.
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 埴岡 伸光 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-207, 2016 (Released:2016-08-08)

【目的】近年、高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤や香り付けを目的とする加香剤商品等の市場規模が拡大している。それに伴い、これら生活用品の使用に起因する危害情報も含めた相談件数が急増しており、呼吸器障害をはじめ、頭痛や吐き気等の体調不良が危害内容として報告されている。このような室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、欧州連合の化粧品指令でアレルギー物質としてラベル表示を義務付けられた香料成分を対象として、FormaldehydeやAcroleinなどのアルデヒド類や防腐剤パラベン、抗菌剤など多様な室内環境化学物質の生体内標的分子であり、これらの化学物質による気道刺激などに関与するTRP (Transient Receptor Potential Channel)イオンチャネル活性化について検討を行った。【方法】ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて、細胞内Ca2+濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネルの活性化能を評価した。Ca2+濃度の測定にはFLIPR Calcium 6 Assay Kitを用い、蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。【結果および考察】香料アレルゲンとして表示義務のある香料リストのうち植物エキス等を除いて今回評価可能であった18物質中9物質が濃度依存的にTRPA1の活性化を引き起こすことが判明した。なかでも、2-(4-tert-Butylbenzyl) propionaldehydeによるTRPA1の活性化の程度は陽性対象物質であるCinnamaldehydeに匹敵することが明らかとなった。以上の結果は、これら香料アレルゲンがTRPA1の活性化を介して気道過敏の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上でも極めて重要な情報であると考えられる。
著者
Ken FUTAGAMI Thomas Kwong Soon TIONG Christine Li Mei LEE Yong Lin HUANG Yoko NOMURA Yasunari KANDA Sachiko YOSHIDA
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第47回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-5S, 2020 (Released:2020-09-09)

環境中や食品中の化学物質が身体に与える影響について、経済協力開発機構(OECD)による統一的な試験が試みられている。発達期の神経形に対する毒性は、確実に毒性を示すポジティブコントロール物質(P物質)と、毒性を示さないネガティブコントロール物質(N物質)が提案されているが、近年、従来N物質とされた物質の一部に発達期毒性があり、自閉症や発達傷害などの高次脳機能障害の増加を誘発することが示唆されるようになった。グリホサートは世界で最も多く使用されている除草剤ラウンドアップの有効成分であり、土壌中ではアミノメチルホスホン酸(AMPA)に代謝され、OECDテストガイドラインのN物質である。除草剤としての機能は、植物中の芳香族アミノ酸を合成するシキミ酸経路において、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)を阻害することである。一方、このシキミ酸経路は動物には存在しないため安全であると考えられてきたが、動物の腸内細菌にはシキミ酸経路が存在するため、近年、胎生期グリホサート曝露により、神経障害の誘発や行動異常が報告されるようになってきた。本研究室では、胎生期に単回100、250 mg/kg-グリホサート曝露又は単回250 mg/kg-AMPA曝露させることにより、小脳の神経細胞異常と行動異常を報告してきた。そこで、本研究では、胎生期慢性グリホサート曝露による小脳皮質に与える影響を検討した。結果は、雄の仔ラットにおいて、プルキンエ細胞の有意な減少が観察された。さらに、雄及び雌の仔ラットにおいて、活性型ミクログリアのプルキンエ細胞層(PL)に対する有意な分布が観察された。従って、グリホサートは発達期に対する神経毒性があると考えられる。
著者
木村-黒田 純子 黒田 洋一郎
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-2, 2018 (Released:2018-08-10)

近年、自閉症、注意欠如多動症(ADHD)など発達障害が急増しており、社会問題となっている。従来、発達障害は遺伝要因が大きいと言われてきたが、膨大な遺伝子研究が行われた結果、遺伝要因よりも環境要因が大きいことが明らかとなってきた。環境要因は多様だが、なかでも農薬など環境化学物質の曝露が疑われている。2010年頃から、有機リン系農薬(OP)曝露がADHDなど発達障害のリスクを上げることを示す論文が多数発表された。2012年、米国小児科学会は“農薬曝露は子どもに発達障害,脳腫瘍などの健康被害を起こす”と公的に警告した(Pediatrics, 130)。OECDによれば、日本の農地単位面積当たりの農薬使用量は、世界でも極めて多い。殺虫剤では、世界で規制が強まっているOPの使用がいまだに多く、ネオニコチノイド系農薬(NEO)の使用量が急増している。国内の子ども(223名、2012-3年)の尿中にはOPの代謝物やNEOが極めて高率に検出され(Environ Res, 147, 2016)、日常的な慢性複合曝露影響が危惧されている。OPはアセチルコリン分解酵素を阻害し、NEOはニコチン性アセチルコリン受容体を介したシグナル毒性(J Toxicol Sci, 41, 2016)を示し、共にコリン作動系を障害する。コリン作動系は、中枢及び末梢の脳神経系で重要であり、特に発達期の脳でシナプス・神経回路形成を担っている。NEOはヒトには安全と謳われたが、哺乳類の脳発達に悪影響を及ぼす報告が蓄積してきている。我々のラット発達期小脳培養系では、短期曝露でニコチン様の興奮作用を起こし(Plos One, 7, 2012)、長期曝露で遺伝子発現を攪乱した(IJERPH, 13, 2016)。我々のデータと共に国内外の報告から、NEOの影響を中心に、コリン作動系を介した脳発達について考察する。
著者
Jeffrey C. Raber Sytze Elzinga Charles Kaplan
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.797-803, 2015-12-01 (Released:2015-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
6 95

Cannabis concentrates are gaining rapid popularity in the California medical cannabis market. These extracts are increasingly being consumed via a new inhalation method called ‘dabbing’. The act of consuming one dose is colloquially referred to as “doing a dab”. This paper investigates cannabinoid transfer efficiency, chemical composition and contamination of concentrated cannabis extracts used for dabbing. The studied concentrates represent material available in the California medical cannabis market. Fifty seven (57) concentrate samples were screened for cannabinoid content and the presence of residual solvents or pesticides. Considerable residual solvent and pesticide contamination were found in these concentrates. Over 80% of the concentrate samples were contaminated in some form. THC max concentrations ranged from 23.7% to 75.9% with the exception of one outlier containing 2.7% THC and 47.7% CBD. Up to 40% of the theoretically available THC could be captured in the vapor stream of a dab during inhalation experiments. Dabbing offers immediate physiological relief to patients in need but may also be more prone to abuse by recreational users seeking a more rapid and intense physiological effect.
著者
植田 康次 井上 みさと 岡本 誉士典 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-199, 2016 (Released:2016-08-08)

マンガンはヒトにおける必須微量元素の一つであるが、過剰曝露により神経系への影響を特徴とする中毒症状を引き起こす。その症状はパーキンソン病に似ていることからマンガン性パーキンソニズムとも呼ばれ、両者の発症機序には部分的な共通項が予想される。パーキンソン病に関与するドパミンを含むカテコールアミンの酸化体であるアミノクロムには神経障害作用があると考えられているが、その障害機序は明らかになっていない。神経細胞が遺伝子発現阻害により緩慢な細胞死を誘導されるという報告などから、われわれはマンガンとカテコールアミンの相互作用が遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。 ドパミンおよびアドレナリンは塩化マンガン存在下において速やかに消失し、アドレナリンからは酸化体であるアドレノクロムの生成増加を確認した。T7 RNAポリメラーゼを用いた再構成RNA合成系において、アドレノムロム、あるいはマンガンとアドレナリンの混合液が濃度依存的にRNA合成を阻害したことから、マンガンによって加速生成したアドレノクロムがRNA合成反応を阻害したと考えられる。鋳型DNAよりもRNAポリメラーゼをアドレノクロムで前処理した方が強くRNA合成が阻害されたため、作用標的としてポリメラーゼが予想される。ヒト細胞でのグローバルな転写への影響を評価するため、新生RNA鎖へのエチニルウリジン取り込み活性をクリックケミストリーを介した蛍光アジド標識により測定する実験系を構築している。ファージと真核生物のRNAポリメラーゼの間の進化的な保存度は低いが、同様の阻害効果がみられた場合、活性部位近傍への作用の可能性も考えられる。
著者
伊関 憲
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S3-1, 2017 (Released:2018-03-29)

硫化水素は自然界に広く存在する毒性ガスで、腐乱臭を呈し空気よりやや重い。火山帯や温泉で発生する他にも、下水道、ゴミ処理場、石油精製工場などでも発生する。硫化水素は人体に対して吸入濃度により様々な症状を発現する。チトクロムオキシダーゼ阻害の作用だけではなく神経毒としての作用があり、高濃度の硫化水素を吸入すると中枢神経系へ素早く移行する。特に呼吸中枢を含む、脳幹に選択的に取り込まれ、1000ppm以上を吸入した場合、意識消失、呼吸停止を来たし死亡する。 硫化水素中毒の原因は、自然災害、労働災害、自殺に分けることができる。自然災害の典型的な被害は温泉地や火山帯での事故である。火山地帯で無風、曇りなどの天候と窪地の条件により硫化水素が高濃度になり、立ち入った観光客などが被害に遭っている。温泉では2014年に北海道足寄温泉での硫化水素事故以来、環境省では入浴施設での規制を行っている。しかし、源泉では依然として高濃度の硫化水素の中で勤務が行われ、温泉管理者に対しての対策が取られていない。 労働災害ではマンホールでの硫化水素の事故が年間数例発生している。現場では高い硫化水素濃度だけではなく低酸素環境のため、死亡者が発生する。このような環境で作業する場合には酸素濃度18%以上、硫化水素濃度が10ppm以下であることが求められている。 自殺については、日本国内で2008年に硫化水素自殺が頻発した。警察庁の発表では2008年1月から11月での自殺者は1007名になったとされている。これは硫化剤の六一〇ハップ(または石灰硫黄合剤)と酸性洗剤のサンポールを混ぜて発生させている。日本では下火になったものの、この硫化水素自殺は海外に波及し、アメリカやイギリスでも同様の事例が頻発している。
著者
河本 光祐 佐藤 至 吉田 緑 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第37回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.142, 2010 (Released:2010-08-18)

【背景】近年,空気中のウィルスや細菌を不活化する機能をもった空気清浄機が多数市販されている。このような空気清浄機の多くはスー パーオキサイドやヒドロキシラジカルを放出することによってその機能を発揮するが,これらの活性酸素は生物にとって有害であるた め,暴露条件によっては人体に害を及ぼすおそれがないとは言いきれない。そこで本研究では,A,B,C,3社の空気清浄機について, その安全性を検討した。 【方法】実験動物は8週齢のICR系の雄マウスを1群5匹として用いた。AとBについては空気清浄機の出口にビニール製のダクトを付け, その中で暴露した。Cはファンを装備していないため,45cm角のインキュベーター内で暴露した。16時間または48時間暴露後に肺を 採取し,DNA損傷(Comet法)を中心に肺への影響を検討した。 【結果】48時間暴露ではAとBで,16時間暴露ではBで有意なDNA損傷が確認された。CではDNA損傷は認められなかった。 【結語】メーカーでは遺伝毒性を含む各種の試験によって製品の安全性を確認している旨公表しているが,機種および暴露条件によって は肺に障害を与える可能性が確認された。当日は病理組織学的所見等とあわせて考察する予定である。
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 百井 夢子 礒部 隆史 青木 明 植田 康次 岡本 誉士典 越智 定幸 埴岡 伸光 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-118, 2018 (Released:2018-08-10)

【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、室内空気中から高頻度で検出され、現在、室内濃度指針値策定候補物質として議論が進められている、2-Ethyl-1-hexanolおよびTexanolと、様々な消費者製品に広く用いられており、特にスプレー式家庭用品等の使用時には室内空気中から高濃度に検出されることがこれまでの実態調査から明らかになっている(-)-Mentholの複合曝露による影響をあきらかにする目的で、気道刺激に重要な役割を果たす侵害刺激受容体TRP (Transient Receptor Potential Channel)の活性化を指標に評価した。【方法】ヒト後根神経節Total RNAよりTRPA1 cDNAをクローニングし、TRPA1を安定的に発現するFlp-In 293細胞を樹立し、細胞内カルシウム濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネルの活性化能を評価した。カルシウム濃度の測定にはFLIPR Calcium 6 Assay Kitを用い、蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。【結果および考察】2-Ethyl-1-hexanol、Texanol および(-)-Menthol それぞれの単独処理ではTRPA1の活性化が認められない濃度域において、2-Ethyl-1-hexanolと(-)-Menthol、Texanolと (-)-Mentholの同時処理によって顕著なTRPA1の活性化が認められることが判明した。室内環境中には様々な化学物質が存在するが、本研究結果より、単独曝露時には気道刺激が引き起こされない場合でも、室内環境中に存在する化学物質の複合曝露によってTRPA1を介した感覚神経あるいは気道の刺激が引き起こされる可能性が考えられる。
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W3-4, 2015 (Released:2015-08-03)

生活環境化学物質がシックハウス症候群や喘息等の主要な原因あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムの詳細については未解明な部分が多い。著者らは生活環境化学物質による粘膜・気道刺激性のメカニズムを明らかにする目的で、ヒトTransient Receptor Potential (TRP) V1及びTRPA1をそれぞれ安定的に発現するFlp-In 293 細胞株を樹立し、その活性化を指標にして室内環境化学物質の侵害刺激について検討した。これまでに評価した238物質のうち、50物質がTRPV1を、75物質がTRPA1を活性化することを明らかにした。なかでも溶剤として広く使用される2-Ethyl-1-hexanolやTexanolをはじめ、一般家庭のハウスダスト中からも比較的高濃度で検出されるTris(butoxyethyl) phosphate、溶剤や香料成分として多用される脂肪族アルコール類、実際に室内環境中に存在する消毒副生成物や微生物由来揮発性有機化合物がイオンチャネルを活性化することが明らかになった。特に、可塑剤等DEHPの加水分解物であるMonoethylhexyl phthalateがTRPA1の強力な活性化物質であることを見いだした。また、塗料中に抗菌剤として含まれ、室内空気を介してシックハウス様症状を引き起こすことが報告されているイソチアゾリノン系抗菌剤や、呼吸器障害を含む相談件数が増加している高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤もイオンチャネルを活性化することが判明した。シックハウス症候群の主要な症状として皮膚・粘膜への刺激があげられるが、本研究結果は、室内環境中に存在する多様な化学物質がイオンチャネルの活性化を介して、相加的あるいは相乗的に気道過敏性の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上で極めて重要な情報であると考えられる。
著者
新藤 充
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S17-5, 2017 (Released:2018-03-29)

インドネシアでかつて生産されていた発酵食品、テンペボンクレックは時として重篤な食中毒事故を引き起こした。ボンクレキン酸(BKA)はBurkholderia Cocovenenansからその原因毒素として単離、構造決定された小分子である。BKAはミトコンドリアの膜タンパク質であるアデニンヌクレオチド輸送担体(ANT)に強く結合し、その機能を阻害することでATPの放出を抑制することが知られている。近年、BKAがミトコンドリア内膜の透過性遷移を阻害し細胞死を抑制することも報告され、バイオツールとして重要な化合物となっている。しかしバクテリアからの生産量が少なく、純粋なBKAの供給量がきわめて少ないことから、詳細な生物作用に関しては断片的な報告しかなされていない。そこで我々はBKAの効率的かつ実践的な新規合成法を検討し、3つのフラグメントを各々合成し最終段階で結合させる収束型全合成に成功した。この合成BKAを用いて細胞死抑制活性に関する細胞試験の実験系を確立し、さらにこの合成法を基盤として構造活性相関研究を行い、3つのカルボン酸が炭素鎖の適切な位置に配置されていることが生物活性発現に重要であることを明らかにした。しかしこの全合成法は効率的とはいえ30工程強を要することから、大量供給には工程数の削減が必須である。そこで化学構造の単純化を考え、半分以下の工程数で合成でき十分な活性を示す誘導体を合成することに成功した。安価で大量合成可能なANT阻害剤の開発の可能性が拓かれたと考えている。これら合成BKAを分子生物学者へ供与することにより、PPARγの選択的活性化作用やWarburg効果によるがん細胞特異的な細胞障害作用などBKAの生物活性に関する興味深い新知見も得られている。本シンポジウムでは有機合成屋がこういった毒性学に関わっている姿をご紹介したい。
著者
山口 敦美 藤谷 知子 大橋 則雄 中江 大 小縣 昭夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4039, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】QUATは2種の4級アンモニウム塩(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドとアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド)の消毒、殺菌剤である。布製品や室内空間を殺菌消臭する目的で、溶液を散布して用いられている。一般的な毒性については古いデータがあるのみで、マウスに経口投与した時、LD50は150-1000mg/kgと報告されている。これまでに我々は、QUATを含む消臭・ハウスダスト除去剤の噴霧で乳幼児が経口摂取する可能性を考え、健康に影響を及ぼすかどうかについての検討をおこなった結果、消臭・ハウスダスト除去剤2mL/kgを21日間新生マウス仔に経口投与した後それらのマウスの交配から生まれた仔マウスに、死亡率の増加と精巣重量の低下を観察した。QUATの免疫系への作用は不明なので、まず免疫毒性を持つかどうかを調べる目的で、8週齢雌ICRマウスにQUATを経口投与し、免疫系に作用を及ぼすかについて検討をおこなった。 【方法】8週齢雌ICRマウスにQUATを0, 50, 100, 200mg/kg経口投与し、2日後に体重と臓器重量を測定、胸腺、脾臓と血中のリンパ球をフローサイトメーターで分析、脾臓細胞のサイトカイン産生能の変化をリアルタイムPCRで測定した。また、QUAT投与の1日後に卵白アルブミンを投与して、産生される抗卵白アルブミンIgM抗体をELISA法で測定した。 【結果・考察】QUAT投与で用量依存的に血中B細胞の減少、B細胞分化に関与するサイトカインIL6, IL10の減少と、抗卵白アルブミンIgM抗体産生の減少が、有意な減少が200mg/kgの投与時に観察された。 今回の結果は、単回大量投与ではあるが、免疫系への抑制作用が用量依存的に見られたことから、繰り返し使用する時の安全性への考慮の必要性が示唆された。
著者
池中 良徳 宮原 裕一 一瀬 貴大 八木橋 美緒 中山 翔太 水川 葉月 平 久美子 有薗 幸司 高橋 圭介 加藤 恵介 遠山 千春 石塚 真由美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-20, 2017 (Released:2018-03-29)

ネオニコチノイド系殺虫剤は、哺乳類における体内蓄積性は短く、昆虫とヒトのニコチン受容体に対する親和性の違いから、ヒトに対する毒性は相対的に低いため、一定の基準以下であれば、日常生活においてその毒性は無視できると考えられている。しかし、日本では諸外国と比べ数倍~数十倍と果物や野菜、茶葉における食品残留基準値が高く設定されていること、また、記憶・学習などの脳機能に及ぼす影響をはじめ、発達神経毒性には不明な点が多いことなどから、健康に及ぼす懸念が払拭できていない。とりわけ、感受性が高いこどもたちや化学物質に過敏な人々の健康へのリスクを評価するためには、ネオニコチノイドが体内にどの程度取り込まれているかを把握することがまず必要である。そこで本調査では、長野県上田市の松くい虫防除が行われている地域の住民のうち、感受性が高いと考えられる小児(3歳~6歳)から尿を採取し、尿中のネオニコチノイドおよびその代謝物を測定することで、曝露評価を行う事を目的とした。当該調査では、松枯れ防止事業に用いる薬剤(エコワン3フロワブル、主要成分:Thiacloprid)の散布時期の前後に、46人の幼児から提供された尿試料中のネオニコチノイドとその代謝産物を測定した。また、同時に大気サンプルもエアーサンプラーを用いて採取し、分析に供した。分析した結果、Thiaclopridは検出頻度が30%程度であり、濃度は<LOD ~ 0.13 µg/Lであった。この頻度と濃度は、Dinotefuran(頻度、48~56%;濃度、<LOD ~ 72 µg/L)やN-dm-Acetamiprid(頻度、83~94%;濃度<LOD~18.7 µg/L)など今回検出された他のネオニコチノイドに比べて低い値であった。次に、尿中濃度からThiaclopridの曝露量を推定した結果、幼児一人当たり最大で1720 ng/日(平均160 ng/日)と計算された。また、分析対象とした全ネオニコチノイドの曝露量は最大640 µg/日であり、中でもDinotefuranの曝露量は最大450 µg/dayに達した。一方、これらの曝露量はADIに比べThiaclopridで1%未満(ADI;180 µg/日)、Dinotefuranで10%程度(ADI;3300 µg/日)であった。
著者
三島 雅之
出版者
日本毒性学会
巻号頁・発行日
pp.S11-2, 2016 (Released:2016-08-08)

バイオ医薬品の高分子不純物には、製造に用いた宿主細胞由来の蛋白質(host cell protein, HCP)、医薬品本体の分解、修飾、会合により発生する蛋白質成分、大量培養中に発生する遺伝子突然変異による医薬品の変異体(sequence valiant, SV)などがある。これらの不純物については通常の分析法では検出しにくいこともあり、その種類や量について十分に把握できないまま、非臨床試験において許容できない毒性が認められないことを根拠に臨床試験に進んでいる。近年の分析技術の進歩により、抗体医薬に混入する高分子不純物の詳細が解明されつつあり、それに伴い、それらの不純物がヒトに与える影響についても徐々に理解されはじめている。CHO細胞に由来するHCPの一種であるPLBL2タンパクは、抗体医薬品に結合して原薬に混入するが、ポリクロ―ナル抗体を用いるHCP分析法では見えにくく、ヒトに対して極めて免疫原性が高い。少量のSVは偶発的に発生するが、アミノ酸変異によりそれまで抗原提示されなかった部位が提示され、医薬品本体が本来誘発しないT細胞の活性化を誘発することがある。抗体医薬のアグリゲートは、ヒト抗原提示細胞において医薬品本体に由来する潜在的T細胞エピトープ配列の抗原提示を増強すると同時に、本体が持たない新たなエピトープを有し、抗医薬品抗体を誘導する可能性がある。また、アグリゲートはFc受容体を通じて、強力にADCC活性やサイトカインを誘導する可能性がある。これら免疫系が介在する反応は、「適切な動物種」を用いた非臨床試験を実施しても、免疫の種差によりヒト毒性が予測できないことが多い。ここでは、最近明らかにされつつある高分子不純物に起因する免疫反応を毒性の観点から整理し、動物で検出できない潜在的リスクに対する非臨床毒性評価の可能性と、医薬品不純物としての許容値設定にむけた課題を論じたい。
著者
Kosuke Kawamoto Itaru Sato Midori Yoshida Shuji Tsuda
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.929-933, 2010-12-01 (Released:2010-12-01)
参考文献数
16

Several appliance manufacturers have recently released new type air purifiers that can disinfect bacteria, fungi and viruses by diffusing reactive oxygen species (ROS) into the air. In this study, mice were exposed to the outlet air from each of 3 air purifiers from different manufacturers (A, B, C), and the lung was examined for DNA damage, lipid peroxidation and histopathology to confirm the safety of these air purifiers. Neither abnormal behavior during exposure nor gross abnormality at necropsy was observed. No histopathological changes were also observed in the lung. However, significant increase of DNA damage was detected by the comet assay in the lung immediately after the direct exposure for 48 hr to models A and B, and for 16 hr to model B. As for model B, DNA migration was also increased by 2 hr exposure in a 1 m3 plastic chamber but not by 48 hr exposure in a room (12.6 m3). Model C did not cause DNA damage. Lipid peroxidation and 8-hydroxy deoxyguanosine (8-OH-dG) was not increased under the conditions DNA damage was detected by the comet assay. The present results revealed that some models of air purifiers that diffuse ROS potentially cause DNA damage in the lung although the mechanism was left unsolved.
著者
佐藤 至 河本 光祐 西川 裕夫 齋藤 憲光 大網 一則 金 一和 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.101, 2006 (Released:2006-06-23)

【目的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにパーフルオロオクタン酸(PFOA)は界面活性剤の一種であり,合成樹脂原料,撥水・撥油剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されていることから残留性有機汚染物質に区分される。これらの物質の毒性については肝障害や発癌性などが指摘されているが,未だ十分な情報が得られていない。このため本研究ではPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方法】Wistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,PFOSを50-200 mg/kg経口投与したラットの大脳皮質,海馬および小脳にニッスル染色を施し,病理組織学的検索を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSを投与した動物では超音波刺激によって強直性痙攣が誘発された。この痙攣は超音波刺激前にジアゼパムを投与しても抑制されなかった。一方ゾウリムシにおいてPFOSと同じ後退遊泳作用を有したSodium Dodecyl Sulfate(SDS)ならびにSodium Dodecanoylsalcosinateは痙攣を引き起こさなかった。PFOS投与24時間後の脳組織(大脳皮質,海馬,小脳)において,神経突起の短縮または消失,ニッスル小体の減少などの変化が用量依存性に認められた。これらの結果からPFOSは神経毒性を有すると結論される。
著者
Masahiko Yamaguchi Daisuke Araki Takeshi Kanamori Yasuko Okiyama Hirokazu Seto Masaki Uda Masahito Usami Yutaka Yamamoto Takuji Masunaga Hitoshi Sasa
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.797-814, 2017-12-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
15
被引用文献数
6

Safety assessments of cosmetics are carried out by identifying possible harmful effects of substances in cosmetic products and assessing the exposure to products containing these substances. The present study provided data on the amounts of cosmetic products consumed in Japan to enhance and complement the existing data from Europe and the United States, i.e., the West. The outcomes of this study increase the accuracy of exposure assessments and enable more sophisticated risk assessment as a part of the safety assessment of cosmetic products. Actual amounts of products applied were calculated by determining the difference in the weight of products before and after use by approximately 300 subjects. The results of the study of skincare products revealed that in comparison with the West, large amounts of lotions and emulsions were applied, whereas lower amounts of cream and essence were applied in Japan. In the study of sunscreen products, actual measured values during outdoor leisure use were obtained, and these were lower than the values from the West. The study of the use of facial mask packs yielded data on typical Japanese sheet-type impregnated masks and revealed that high amounts were applied. Furthermore, data were obtained on cleansing foams, makeup removers and makeup products. The data from the present study enhance and complement existing information and will facilitate more sophisticated risk assessments. The present results should be extremely useful in safety assessments of newly developed cosmetic products and to regulatory authorities in Japan and around the world.
著者
野村 大成
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1103, 2013 (Released:2013-08-14)

放射線も化学物質も,受精(男性にとっては授精)前の被曝により,子孫に継世代的(遺伝的)影響が発生することは,膨大な数のマウスを用いて証明されている(通称“100万匹マウス実験”等)。また,親の被曝により子孫にがんや形態異常が発生することもマウス,ラットで報告されています(通称“大阪レポート”)。ヒトにおいても,放射線被曝(健康診断,核実験,原発事故等)で,次世代にがん,形態異常や突然変異が発生したという論文も発表されている。しかし,広島・長崎被曝者の子供において,近距離被爆と遠距離被曝の間での差は明らかにされていないことから,“放射線は調べた限りヒトを除くすべての生物に突然変異を起こす”というような表現がされることがある。日本毒性学会シンポジウム「放射線毒性学における課題」においては,放射線の継世代影響に焦点を絞り,各種放射線の外部・内部被曝による遺伝的影響に関するこれまでの動物実験での成果に最新の研究成果を加えて総括を行うとともに,ヒト放射線被曝集団での次世代影響について最近の調査研究と今後の方針を紹介する。動物実験においては,生殖細胞期や胎児期放射線被曝単独では,次世代での腫瘍発生頻度の増加はわずかであるが,生まれてから,非発がん性,非変異原性腫瘍促進物質や,微量の発がん性物質の投与や放射線照射を受けると,がん発生が大きく促進されることが示されている。放射線と化学物質の複合被曝による生体影響の増幅であり,後日,放射線による遺伝的不安定性を示した最初の動物実験と評価されている。このような複合被曝においても,放射線の線量率効果は明確に存在している。人類の実際の被曝形態が,このような複合被曝であることを考えると,放射線毒性学における大きな課題を提起するものであり,そのリスク推定と防護の見地から重要な意味がある。
著者
香川(田中) 聡子 中森 俊輔 大河原 晋 岡元 陽子 真弓 加織 小林 義典 五十嵐 良明 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.2003146, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因,あるいは増悪因子となることが指摘されているが,そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。イソチアゾリン系抗菌剤は塗料や化粧品・衛生用品等様々な製品に使用されており,塗料中に含まれるこれら抗菌剤が室内空気を介して皮膚炎を発症させる事例や,鼻炎や微熱等のシックハウス様症状を示す事例も報告されている。本研究では,侵害受容器であり気道過敏性や接触皮膚炎の亢進にも関与することが明らかになりつつあるTRPイオンチャネルに対するイソチアゾリン系抗菌剤の活性化能を検討した。【方法】ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて,細胞内Ca2+濃度の増加を指標としてイオンチャネルの活性化能を評価した。Ca2+濃度の測定にはFLIPR Calcium 5 Assay Kitを用い,蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。【結果および考察】2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one (OIT)がTRPV1の活性化を引き起こすことが明らかになった(EC50:50 µM)。また,TRPA1に関しては,2-methyl-4-isothiazolin-3-one (MIT),5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one (Cl-MIT),OIT,4,5-dichloro-2-n-noctyl-4-isothiazolin-3-one (2Cl-OIT)及び1,2-benzisothizolin-3-one (BIT)が顕著に活性化することが判明し,そのEC50は1~8 µM (Cl-MIT, OIT, 2Cl-OIT, BIT)から70 µM (MIT)であった。これらの物質が,TRPV1及びA1の活性化を介して気道過敏性の亢進等を引き起こす可能性が考えられる。諸外国においてはこれら抗菌剤を含む製品の使用により接触皮膚炎等の臨床事例が数多く報告されており,我が国でも近年,冷感効果を謳った製品の使用による接触皮膚炎が報告され,その原因としてイソチアゾリン系抗菌剤の可能性が指摘された。これら家庭用品の使用により,皮膚炎のみならず,気道過敏性の亢進等シックハウス様の症状が引き起こされる可能性も考えられる。