- 著者
-
吉永 和恵
- 出版者
- 公益社団法人 日本皮膚科学会
- 雑誌
- 日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.14, 1975
色素性母斑の加令による変動を検べる目的で自験例62例について臨床分類を行ない, Miescher et Albertini の分類に従い,組織学的検討を行なった. 生下時より存在する非隆起性斑状母斑,点状集族性母斑は生涯を通じ非隆起性で,組織学的に a,b 型母斑細胞のみからなり,加令め変化としては境界母斑から真皮母斑への移行がみられたL隆起性斑状母斑,巨大色素性母斑,乳頭状母斑は後年(恐らくは10代以後)隆起性となり,組織学的に加令に無関係に境界活性を有し. a,b 型母斑細胞の下方に合胞体形成細胞,c 型母斑細胞が増加している.長じても複合母斑の形を留めていた. 生後に出現する丘疹状黒子,軟属腫様母斑,前者は10代から隆起性となり,後者は20代になって出現する.a,b 型母斑細胞は b 型母斑細胞の巨細胞化,浸潤細胞の出現,間質の増加も加わって加令とともに衰退の傾向を示したが,合胞体形成細胞,マイスネル小体様器官は真皮下層から上層に向かって加令とともに増加の傾向を示したレ 次にこれら母斑の構築要素の非特異的コリンエステラーゼ活性の有無を検討した. ChE は表皮滴落型母斑細胞である a,b 型母斑細胞は陰性, Schwann由来とされる合胞体形成細胞,マイスネル小体様器官,c 型母斑細胞のいずれも活性を示した.酵素学的にも2系統の集合体の組合せによって病型毎に活性の状態は異なっていた.臨床的に非隆起性であるか,隆起性となるかめ理由として. a,b 型母斑細胞が胎生中,生後もまなくのうちに増加したのに比し, Schwann 由来性母斑細胞は遅れて,10代になって出現,増加する特徴を有する母斑細胞であるためと考えた.