著者
中野 進
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, 1958

1928年Flemingのより,最初の抗生物質としてペニシリン(以下ペと略す)が発見され,その卓越した抗菌作用により,多くの伝染性疾患にたいしておどろくべき治療効果を発揮し,従来不良の転帰をとつた疾患も多くは治癒し,その他の疾患にたいしても治療経過をいちじるしく短縮し,ペの普及は広くなつてきた.わが国においても戦後間もなくより少量ながら使用されたが,その後の生産の増加とこれにともなう低廉化により,その使用が広く一般に普及し,さらに注射薬としては水性のほかに油蝋・C油性或は懸濁性のペが製造されるにいたり,その使用法は一層簡単となり,加うるにペ軟膏あるいはペ目薬が出現し,しかもこれら薬剤の副作用は殆ど考慮する必要がない理由により,ペの使用は医師の手を経ず直接患者により使用される場合も多く,ある面においては濫用の傾向もみられるようになつた.まさにこの情勢にたちいたつた1950年頃より,ペによる副作用ともみるべき症状が出現するようになつたが,当初はなお重要視されず,ペの使用は以前にも増して盛んであり,その副作用もしだいに増加し,ついに1954年頃よりペ・アナフィラキシーショックによる死亡例も稀ならずみられ黙過しがたい情勢となつた.これより早く欧米においても,1943年頃よりLongその他によりすでにペの副作用例が報告されており,さらに1945年にはCormiaによりペ副作用中もつとも問題となるペ・アナフィラキシーの症例が,1949年にはWaldbottによりその死亡例が報告されている.以後今日にいたる間のペ副作用に関しては枚挙にいとまがないほどの報告がある.しかしながら,その副作用のゆえに,ペの有するすぐれた治療効果その他の利点を無視して,その使用を中止するがごときは医家としてとるべき態度ではなく,むしろさらにすすんでその副作用防止の措置をこうじた上で使用を続けるべきである.今後ペを使用するかぎりにおいて,その副作用を予防することが不可欠の重要事であり,この問題に関する諸家の検索も急となつてきたが,今なお解明しえない点も少なからずあり,ペ使用に際しての一大課題となつている.著者はこれらの観点から,臨床実験および動物実験により,ペの副作用にたいする薬剤による予防効果を検索し一定の結論をえたのでその他2・3の問題を併せ報告する.

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ペニシリンの副作用予防に関する研究 https://t.co/albtcmeDGq

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