著者
飯田 都
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.367-376, 2002
被引用文献数
1

本研究の目的は, 教師の児童認知だけでなく児童の教師認知を視野に入れ, 学級適応感における児童の認知機能の役割に関して, 探索的検討を行うことであった。教師一児童の関係性が明確であり, 且つ教師の要請に関する認知の仕方の独自性が顕著であった児童4名を対象とし, 彼らの教師の要請像の様相を検討した。その結果,(a) 教師の要請に関する児童の認知が, 自己高揚的であった場合, その児童は不得手とする要請に関しては, 教師の否認による要請を過小評価し, 一方, 得手の要請は過大評価する。また, 認知された方向づけは承認が中心である。(b) 教師の要請について児童の認知が自己卑下的であった場合, 当該児童は不得手な要請に関する否認による方向づけを過大評価し, 得手の要請に関しては過小評価する。また, 否認による要請の方向づけが強く認知されている, 等の認知的特徴に関わる事例が報告された。これらの結果は, 教師の要請に対する児童個々の要請認知のあり方が, 学級適応感を規定する重要な要因であることを示唆するものであった。児童の学級適応感を理解する上で, 教師の対児童認知のみならず, 児童の教師認知要因をも考慮する必要性について考察した。

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