- 著者
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朝倉 恵美
面出 和子
- 出版者
- Japan Society for Graphic Science
- 雑誌
- 図学研究 (ISSN:03875512)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.4, pp.11-18, 2013
受胎告知は,大天使ガブリエルがマリアに,主によるイエスの懐妊を告知する新約聖書中の教義である.しかし,受胎告知図は,典拠に具体的で詳細な説明がなかったため,画家によって様々に解釈され,創作されてきた.本研究では,中世から近代までに描かれた多くの《受胎告知》のうち,絵画を213点収集し,《受胎告知》における空間表現を年代別,地域別に分類した.さらに,それらの絵画空間を図学的に考察した.その結果,地域,時代によって表現は変化しており、ルネサンス以降のイタリアでは, アルベルティの理論の影響が大きかったと考えられる.また,一点透視図的に描かれた作品は153点あったが,画面上の消失点の位置を,イタリアと北ヨーロッパ地域の作品で比較すると,イタリアではマリアと同じような高さであり,北ヨーロッパでは下方にあって,情景全体を見下ろすような視覚で描かれるような異なった特徴が見受けられた.