- 出版者
- Tokyo Geographical Society
- 雑誌
- 地学雑誌 (ISSN:0022135X)
- 巻号頁・発行日
- vol.120, no.2, pp.Cover02_1-Cover02_2, 2011
2010年は太平洋高気圧におおわれて8月を中心に暑さが厳しく,6月以降,東京でも最高気温が35℃を超える猛暑日が13日間,明け方の気温が25℃以下に下がらない熱帯夜の日数が56日間という記録的な高温状態が継続した.<br> 表紙写真は,都心部で最高気温が36.5℃を記録した8月15日の正午頃に,都心湾岸部の上空約5000フィート(1525m)からヘリコプターに搭載したサーモグラフィーで捉えた地表面の熱画像(放射輝度温度分布)である.なお,放射率は一律(ε=1.0)に設定し,表面材質の違いによる補正は行っていない.<br> 皇居(A)や浜離宮庭園(E)など,緑豊かなエリアが比較的低温を示すほか,南北に流れる隅田川(F)の水面が28℃以下と低くなっており,東京湾からの涼しい海風を通す「風の道」としても有効に働いていることがわかる.また,東京駅周辺(B)や汐留の高層ビル群(C)付近も比較的低温になっている.<br> 一方,湾岸の埋め立て地域や隅田川東岸に広がる密集した中低層商工業地帯の表面温度は40℃を超えている.築地の東京都中央卸売市場(D)の表面温度が高いのは,建物の屋根面の材質が影響していると考えられる.<br>(文:三上岳彦 熱画像:スカイマップ株式会社)