- 著者
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後藤 一雄
伊藤 豊志雄
- 出版者
- Japanese Association for Laboratory Animal Science
- 雑誌
- Experimental Animals (ISSN:00075124)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.3, pp.389-394, 1994
- 被引用文献数
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ティザー菌をPCR法を用いて, 高感度かつ特異的に検出する目的で, マウス由来ティザー菌 (MSK株) の16SリボゾームDNA (rDNA) の塩基配列を決定し, その配列をRJ株 (ラット由来) の配列と比較した。決定された配列はMSK株およびRJ株で相同性が高かったが (97%以上) , 他の菌種との相同性は低かった (70~83%) ことからティザー菌種に特異的配列を含んでいると考えられた。そこで, PCR法でTyzzer菌種を特異的に検出するプライマーをこれらの塩基配列をもとに選択した。選択されたプライマーを用いたPCR法では, ティザー菌2株 (MSK株およびRJ株) の他, ハムスター由来のHN株を検出できたが, ティザー菌以外の細菌は検出されず, ティザー菌種に対して高い特異性を示した。また, 1個以上のティザー菌 (RJ株) が検出可能であった。さらに, 9匹のJc1: Wistarラットに2×10<SUP>4</SUP>の菌を経口的に実験感染させ, 接種後1, 3および5日目にそれぞれ3匹ずつ肝臓, 心臓, 盲腸, 脾臓および腸間膜リンパ節を採材しPCR法および蛍光抗体法を用いて菌検索を行った。接種後1および3日目の材料からはいずれの方法においても菌は検出されなかった。しかし, 接種後5日目のラットのうち1匹は肝臓および心臓から, 他1匹は盲腸からそれぞれ両方法によって菌が検出された。これらの結果から, 今回明らかにされたMSK株16SrDNAの塩基配列はティザー菌種間でよく保存されていること, さらに選択されたプライマーを用いたPCR法が高感度かつ特異的なティザー菌診断法として有用であることが示唆された。