著者
木原 秀樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0579-D0579, 2005

【目的】医療の高度化は救命後の障害の重度化をもたらした反面、気管切開児や人工呼吸器装着児などの在宅療養も可能とした。医療的ケア児の在宅療養は理学療法士(PT)のみで支援できるものではないが、呼吸器合併症をもつ児にとって合併症症状の抑制や治癒は、入院児の在宅移行をスムーズにし、在宅療養児の入退院の繰り返しによる家族の介護負担も軽減できる。2例の"いわゆる寝たきり児"を通して、当院における呼吸理学療法アプローチが至った経過を報告する。<BR>【症例1】<診断名>ギランバレー症候群(劇症型)(男児:現4歳)<現病歴>1歳4ヶ月に意識レベルの低下、呼吸抑制を認め当院へ搬送。<経過>1回目入院(231日間)無気肺・肺炎を5回繰り返す。退院時にはペースト食の摂食嚥下、支持坐位が可能。2回目入院(645日間)再発し、入院後から312日間で11回の無気肺・肺炎を繰り返し、気管切開術も施行した。その後、トータル的な呼吸ケアが整った後333日間、呼吸器合併症なく転院。気管切開後から転院後までCVC/WT変化なし。人工呼吸器装着にて"いわゆる寝たきり"の状態のまま転院。<BR>【症例2】<診断名>先天性筋緊張性ジストロフィー(男児:現17歳)<現病歴>9歳まで寝返りとずり這いまで可能であった。当院リハ外来紹介時には"いわゆる寝たきり児"であった。体重が50kg前後あり、母は慢性関節リウマチ、父は慢性腰痛あり、主に祖母が介護キーパーソンであった。<経過>PTが関わりだした2001年5月から2003年12月までの約2年6ヶ月間で、無気肺・肺炎により8回の入退院を繰り返し、気管切開術も施行した。その後、トータル的な呼吸ケアが整った後2004年11月現在までの約1年間で、感染による呼吸器合併症なく在宅療養をしている。<BR>【結果】試行錯誤しながらアプローチを変更し、最終的にどのようにしたら無気肺・肺炎の繰り返しがなくなったのか?<症例1>定期体位変換を左右90°側臥位、腹臥位実施。均一の完全側臥位、腹臥位がとれるように個別のクッションを作製。口鼻腔の涎が少ないときは、椅子坐位の保持による肺容量の拡大。涎の気道垂れ込み防止に、気管カニューレを太く細いものに交換、ベッドはフラット、口腔内の持続吸引。家族への呼吸理学療法施行の再指導。PTによる呼吸理学療法は排痰体位、バッグ加圧、Squeezing、押さえ込み法を実施。<症例2>夜間BiPAP導入。腹臥位の導入(ホームヘルプ・訪問看護・訪問教育などで実施)。呼吸理学療法が可能な訪問看護stへ変更。地域サービスなどにより、在宅療養からの生活範囲の拡大。<BR>【考察】"いわゆる寝たきり児"を通して、トータル的な呼吸ケアで、ある条件が整った時から繰り返していた無気肺・肺炎が無くなった。姿勢管理、air entry、排痰、嚥下機能評価など、あたりまえの呼吸ケアをトータル的かつ持続していくことの重要性を実感した。そのためには、御家族や地域のサービスを巻き込んだケアをコーディネートすることも大切である。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

1 1 https://t.co/mJGeZUFPad
こんな論文どうですか? "いわゆる寝たきり児"の繰り返す無気肺・肺炎が無くなった日(木原 秀樹),2005 https://t.co/6acwG3uVrW

収集済み URL リスト