- 著者
-
河合 麻美
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2010, pp.GbPI1468-GbPI1468, 2011
【目的】<BR>平成22年度に行われた理学療法士実態調査(PT白書)によると、会員の75%が社会生活においてストレスを感じていると回答しており、会員に対し職場や家庭など日常的なストレスにどう対応していくかの策が必要になると考えられる。今回、私は対人関係のストレス対策の一つとしてセルフコーチングを用いて自分の感情をコントロールし問題解決する方法を提案し、社団法人千葉県理学療法士会ワークライフバランス部、社団法人神奈川県理学療法士会会員ライフサポート部において理学療法士を対象とした研修会を開催しアンケート調査を行ったので、内容と共にアンケート結果を報告する。<BR><BR>【方法】<BR>平成22年1月社団法人千葉県理学療法士会ワークライフバランス部、6月社団法人神奈川県理学療法士会ライフサポート部においてセルフコーチング研修会「テーマ:自分らしく働こう」を開催した。時間はいずれも講義30分、参加者同士で行うワークを60分の全90分で行った。研修会終了後、参加者全39名を対象に無記名選択式及び記入式アンケートを行った。内容は研修会の満足度、セルフコーチングでの難しいと感じる点(複数回答可)、参加しての気付き(自由記載)、感想の4項目とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR>アンケート調査施行の際、本研究の趣旨と本学会への発表の説明を行い、対象者全てに同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR>研修会の講義内容はセルフコーチングで大切な自分の内側のコミュニケーション、A.感情を受け止める方法、B.感情の捉え方・解釈の仕方、C.信念(ビリーフ)の書き換え方、D.自分への質問の選択法、E.相手へ伝える方法に分けて行い、ワークでは自分自身のコミュニケーションを発見するタイプ分けを行った後、参加者とのシェアや自分らしさを見つけるためのワークをディスカッション形式で行った。アンケートの回収率は100%で、結果は研修会に対する満足度ではとても満足27名(69%)、まあまあ満足9名(23%)、どちらともいえない1名で、セルフコーチングで難しいと感じる点は講義内容よりA.13名(17%)B.13名(17%)、C.11名(14%)、D.28名(36%)であった。また参加しての気付きは、自分を見つめ直すことが出来たが25名と最も多く、多様性・人との違いを感じることが出来た8名、職場で使える5名、その他、考え方を変えていけそう、自分にOKが出せた、自分の目標が見つかったなどの回答があった。 <BR><BR>【考察】<BR>今回、理学療法士を対象としたセルフコーチング研修会を開催し、参加者からは概ね満足との結果が得られた。これまで理学療法士対象の研修会では参加者同士のディスカッションの場などはあまりみれらず、参加者も初めは戸惑い気味であったが、終了時には笑顔で参加者同士が会話する姿が多く見られた。ワークを通じて自分のコミュニケーションをを見つめ直すと共に、他人との違いを知ることで人の多様性を実感することが出来たものと思われる。また、アンケート結果から参加者は少なからずコミュニケーションの困難を感じている場面があることが分かり、ただ苦手意識を感じるだけでなく、その方法を提示することでまた明日からの職場や家庭のコミュニケーションで実践していけるのではないかと考える。平成22年度のPT白書によると、現在自分のことを「幸せでない~どちらとも言えない」と感じている会員は全体の28.7%となっている。幸せであるかどうを感じるのは自分自身であることから考えると、自分の内側のコミュニケーションを良くすることで「幸せ」に関する感じ方や受け止め方も変わってくるのではないかと思われる。また厚生労働省が2008年に発表した「平成19年労働者健康状況調査結果の概要」によると仕事での最大のストレスの原因は「職場の人間関係」であり、仕事の質や量を上回る結果となっていた。理学療法士は職業柄、職場において人とのコミュニケーションは欠かすことが出来ず、職場スタッフだけでなく、患者さんや利用者さん、ご家族、他職種などその対人関係も多岐に渡っている。このことから、理学療法士自身が日常のストレスをコントロールし問題解決することで、仕事や家庭の充実や就業継続に繋がると考えれ、理学療法士を対象としたセルフコーチングなどコミュニケーション研修会の必要性が示唆された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>理学療法施行上様々な場面でコミュニケーションは不可欠であり、且つ仕事上の最大のストレス原因は対人関係であることから、我々理学療法士一人ひとりがストレスコントロールやコミュニケーション法を学び、生活することで仕事の充実に繋がり、理学療法の質に貢献出来ると考える。