著者
髙木 直
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

<目的> 家庭科では,適量で栄養バランスのよい食事を摂取するために栄養所要量や栄養素の種類と食品との関係などを指導してきている。しかし,これらの学習内容を日々の食生活に活かすには難しい生徒も多く,実践に活かすために,概量を知る上で,針谷・足立が提唱した「3・1・2弁当箱ダイエット法」(以下,「3・1・2弁当箱法」と称す。)が有効であると考えられる。 「3・1・2弁当箱法」は,5つのルールに従って,主食・主菜・副菜を弁当箱に詰めることにより,1食に必要なエネルギーや栄養素を適量かつバランスよく摂取できるとされている方法である。また,弁当箱の容量(ml)とエネルギー量(kcal)がほぼ同値となる点も1食の食事の全体量が掴みやすく,どれ位食べればよいかの理解にとても有効だと考えられる。 しかし,実際には弁当の詰め方には個人差があることが予想され,5つのルールのうちの1つである「料理が動かないようにしっかり詰める」ということが,実際にどのように受け止められどのように詰めることができるのかを明らかにし,授業に活用する際の注意点として押さえることが大切である。 そこで,本研究では,弁当の詰め方に着目し,ばらつきの程度を明らかにすることを目的とする。<方法>  調査対象者は山形市内のY大学の学生36名(男女各18名)で,調査時期は2011年9~11月。調査方法は,630mlの弁当箱を用意し,1メニューに対し男女6人ずつ計12人,3メニューについて弁当詰めを実施させる。その際の指示内容は以下の3点である。①主菜・副菜は全種類使う。②主食・主菜・副菜を投影面積比で3:1:2にする。ただし,同グループ内での詰め方は自由とする。(例えば,主菜のスペースにハンバーグ4つと卵焼き1つでも,ハンバーグ2つと卵焼き3つでもよい。)③ふたを閉めてもつぶれない程度の高さまで,料理が動かないよう隙間なくしっかり詰める。なお,各メニューの内容は次のとおりである。メニューA:主食=米飯,主菜=豚の生姜焼き,卵焼き,副菜=きんぴらごぼう,小松菜とえのきのお浸し,ミニトマト,ブロッコリーメニューB:主食=米飯,主菜=ハンバーグ,卵焼き,副菜=ポテトサラダ,ほうれん草のごま和え,ミニトマト,ブロッコリー,メニューC:主食=米飯,主菜=サンマの竜田揚げ,ウインナソーセージ,副菜=ひじき煮,カボチャの煮物,ミニトマト,ブロッコリー<結果及び考察>  3メニューの全重量の平均と標準偏差は,メニューAが338±32g,メニューBが349±38g,メニューCが315±39gであった。足立らが「しっかり詰める」確認方法として弁当の重量(g)が弁当の容量(ml)の約7割程度としていることと比較してかなり少なく50%~55%であった。エネルギー量についてはメニューAは526±75kcal,メニューBは538±66kcal,メニューCは533±84kcalであり,630kcalに及ばない者が大半であった。主食,主菜,副菜の投影面積比率が3:1:2(50%:17%:33%)になっているかどうかについては,誤差を±5%とし,その範囲内に収まった者は主食30名(85.7%),主菜26人(74.3%),副菜23名(65.7%)であった。範囲未満者は主食5人(14.3%),主菜0人,副菜7人(20%)であり,範囲超過者は主食0人,主菜9人(25.7%),副菜5人(14.3%)であった。このことから主食は少なめに,主菜は多めに入れる傾向が見られた。主菜の米飯は3メニュー通してみると,男女で有意差が見られ,男子(174±31g)のほうが女子(150±31g)に対して多く詰めていた。弁当の容量(ml)=熱量(kcal)にするためには,いくつかの指示を与える必要のあることが明らかとなった。

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