- 著者
-
福井 典代
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第54回大会・2011例会
- 巻号頁・発行日
- pp.74, 2011 (Released:2011-10-11)
目的
各メーカーからすすぎ1回で洗濯が可能な超コンパクト洗剤が発売され,洗濯工程の時間短縮と節水効果が期待されている。しかしながら,今まで2回行っていたすすぎを1回のみのすすぎで十分に洗剤が除去されているのか不安に思う消費者は多い。そこで本研究では,各洗濯工程における水の表面張力の測定を通して,水中に含まれる洗剤濃度を予測した。この実験結果から,目に見えにくい洗剤量の把握を通して洗濯におけるすすぎの役割を理解するための教材を作成した。
方法
1)陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下SDSと略す。)を用いて,濃度の異なる水溶液を調製して,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した。
2)簡易液滴法により,4種類の市販合成洗剤(メーカーの異なる2種類の超コンパクト洗剤,液体洗剤,粉末洗剤)水溶液の表面張力を測定して,臨界ミセル形成濃度(以下cmcと略す。)を算出した。
3)電気洗濯機を用いて4種類の市販合成洗剤による通常洗濯を行い,各洗濯工程の水を採取して,簡易液滴法により表面張力を測定した。
4)文献をもとに衣類に残留する界面活性剤量から各市販合成洗剤の水溶液濃度を算出して,すすぎ限界濃度として定義した。上記3)の洗濯工程における実験結果と比較して,各洗剤のすすぎ性能の定量化を試みた。
5)各洗濯工程の水溶液の表面張力の値と水道水の表面張力の値を比較することから,すすぎの役割を理解できる教材を提案した。
結果
1)濃度の異なるSDS洗剤水溶液を用いて,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した結果,相関係数r=0.8767となり,両者の測定値に比較的高い相関関係が得られた。この結果から,以下に行う実験は比較的容易に測定できる簡易液滴法を用いて表面張力を測定することにした。
2)4種類の市販合成洗剤水溶液の表面張力を測定してcmcを算出した結果,各洗剤の使用量の目安と類似した濃度となった。超コンパクト洗剤のcmcは液体洗剤,粉末洗剤のcmcと比較して約1/2の濃度であることがわかった。
3)4種類の市販合成洗剤の各洗濯工程の水の表面張力を測定した結果,すべての洗剤において,洗い,すすぎ1回目,すすぎ2回目の順に表面張力は高くなった。
4)超コンパクト洗剤では,文献をもとに算出したすすぎ限界濃度の表面張力よリすすぎ1回目の表面張力が高く,水の表面張力に近い値となった。この結果から,すすぎ1回での洗濯により,十分に洗剤成分が除去されていることがわかった。
5)以上の基礎実験の結果をグラフ化して,すすぎの役割を視覚的に理解できる教材を作成した。