- 著者
-
福井 典代
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.56, 2013
【目的】<br>東日本大震災による原子力発電所の事故の影響から,昨年度の夏期には厳しい節電要請があった。企業とともに各家庭での協力が不可欠であり、節電に関する個人の意識を高めるきっかけとなった。学校現場においても環境問題の観点から、節電の必要性が高まっている。そこで本研究では、環境教育を取り入れることが可能な小学校家庭科において、節電に対する意識を高め、実践する能力の育成をめざした教材の開発を行った。<br>【方法】<br>1.大学生が考える環境問題について実態調査を行い(2012年12月)、類似した内容に分類して環境問題の大枠を捉えた。<br>2.小学校学習指導要領解説および小学校家庭科の教科書で取り扱われている環境教育に関する記述内容を分析した。<br>3.「環境教育指導資料(小学校編)」(国立教育政策研究所教育課程研究センター)の中から実践事例を教科別に調査して、小学校における環境教育の取り組みを把握した。<br>4.節電に関する教材を作成するために、一般家庭で用いられる電気製品の待機電力量(電子レンジ、パソコン、エアコン、テレビ、炊飯器)と消費電力量(冷蔵庫、エアコン、電気ポット、電気ケトル)を測定した。用いた測定器は、ワットメーター(SANWA SUPPLY TAP-TST9)である。<br>5.4で得られた測定結果を活用して、節電に関する小学校家庭科の授業案を作成した。 <br>【結果および考察】<br>1.大学生を対象として、環境問題として考えられることについて質問調査を行った。その結果、環境問題は「地球温暖化」、「ごみ問題」、「エネルギー問題」、「大気汚染」、「森林破壊」、「海洋汚染」、「生態系の攪乱」の7つに分類された。「エネルギー問題」では、「電力不足」、「原子力問題」、「自然エネルギー」、「資源の枯渇問題」の4つにまとめられた。<br>2.小学校では、家庭科、生活科、社会科、理科、道徳、総合的な学習の時間において環境教育に関する内容が取り上げられていた。家庭科では「D身近な消費生活と環境」を軸として、A~Dのすべての項目において環境教育が関連づけられていた。小学校家庭科教科書の比較では、K社の教科書が環境教育に関して充実した内容を記述していた。<br>3.「環境教育指導資料(小学校編)」の実践事例では、すべての学年において取り組まれており,調べ学習を行ったものが多い。家庭科では「ごみ」や「生活排水」を題材とした実践事例が多く,「節電」を題材とした実践事例は少なかった。<br>4.一般家庭で用いられる電気製品の待機電力量を測定した結果、テレビ、パソコン、電子レンジの待機電力量が、炊飯器、エアコンの待機電力量より7~9倍多い結果となった。電気製品の消費電力量では、冷蔵庫の強弱設定を強くすると消費電力量も増加し,冬場よりも夏場の方が消費電力量は多い。エアコンでは、暖房の設定温度を高くすると消費電力量も多くなった。電気ポットでは,水量1.0リットルの場合、電気ケトルで11回沸騰させる消費電力量と電気ポットを24時間保温しておく消費電力量がほぼ同じであった。<br>5.本研究で提案する小学校家庭科の授業案は、「C(2)快適な住まい方」と「D(2)環境に配慮した生活の工夫」との関連を図り題材を設定した。<br>本研究にご協力いただきました平成24年度卒業生の矢野由姫さんに感謝いたします。