著者
片山 勢津子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.10, 2005

NYチェアXがMOMAの永久収蔵品に選定されるなど,NYチェアは名作椅子として知られる。しかし他と違い,廉価で雑貨店等でも手軽に購入できるため,作者の新居猛やその作品,制作姿勢についてあまり知られていないのが実情である。本稿では,椅子制作に至った経緯や折り畳み椅子の系譜,コピー製品を廻る裁判からNYチェアの制作思想を探る。新居の家業は剣道具屋であったが,戦後,GHQによって剣道が禁止になったため,彼は木工技術を学ぶ。作品で詳細が分かる椅子は24脚で,特徴のあるのはNYチェアシリーズ9脚と試作2脚の計11脚である。その変遷を見ると,折り畳み形式,安定性,軽量化,使用場所等を考慮して改良していることがわかる。自社工場で製作するため,自ら使用して改善,試作を重ね,大衆向けに拘りコスト削減を図る。こうした新居の椅子への思いを踏みにじったのが,コピー商品の出現である。著作権の侵害を一人訴えたが,最高裁でも棄却された。それ以降,彼は真似のできないオリジナル製品を強く指向する。他にない椅子を作ろうと考え,洋の椅子を和の伝統技術で作り上げた職人気質をNYチェアには認めることができる。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? NYチェアシリーズにみる新居猛のデザイン思想(片山 勢津子),2005 https://t.co/rjc3D14fn9

収集済み URL リスト