著者
三橋 俊雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.46-46, 2006

1200年を超える悠久の歴史に育まれてきた京都は、今もなお、日本の伝統文化が生き続ける歴史都市である。とりわけ世界文化遺産に登録された社寺をはじめとする優れた文化財、伝統的な町並み、そして、それらを取り巻く山紫水明の自然が織り成す京都の景観は、われわれが後世に伝えていくべき日本の文化的資産である。 しかし、1980年代のバブル経済期における、投機目的の地上げや無秩序なマンション建設など、市街地の景観や自然景観の破壊が拡大した。 こうした状況下で、京都市市街地景観整備条例等により、景観の保全・保存に努力してきたが、一方、その保全・保存のあり方が、伝統的建造物に対して問われ始めている。 外壁だけを残して内部を新築する「ファサード保存」、建物のごく一部を残しただけの「カサブタ保存」、そして、現在の建物を撤去し、新たに異なる材料によってそっくりな建物を新築する「レプリカ保存」的な改築計画が実行され、建築として、景観としての真正性(authenticity)が問われることとなった。 2004年の景観法の制定を契機に、一人でも多くの市民が、真のアメニティーを標榜し、すぐれた眺望・背景景観がもつ精神的文化的価値を再認識、再評価していく必要がある。

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