- 著者
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中園 美紀
岩佐 真宏
- 出版者
- The Mammal Society of Japan
- 雑誌
- 哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.59-65, 2015
本研究では,地表棲小型哺乳類の生態研究への応用を目的とした自動撮影センサーカメラの使用法を検討した.まず通常の水平方向での撮影を行ったところ,被写体はきれいに撮影されるものの,種同定に重要な情報になり得る体サイズを把握することができなかった.そこで,被写体の焦点距離を一定にできるよう,三脚に自動撮影センサーカメラを固定して上方から垂直方向に撮影する方法を試行した.その際,地面には10 mmメッシュの方眼が描かれたカッターマットを敷き,そのマット中央に誘因用の餌(オートミール)が入った釣り用のサビキカゴを固定して設置した.またカメラバッテリーを24時間以上維持させるため,撮影のインターバルを1分間とした.その結果,ほぼ一定の倍率で被写体が撮影され,体サイズを計測することが可能になり,尾長等からドブネズミ<i>Rattus norvegicus</i>やヒミズ<i>Urotrichus talpoides</i>は容易に同定可能であった.一方,形態の酷似するアカネズミ<i>Apodemus speciosus</i>とヒメネズミ<i>A. argenteus</i>は,眼球直径と左右の眼球間の外縁幅と内縁幅の差を用いることで正確に同定できた.さらに本使用法により,アカネズミの活動時間帯について,2013年11月~2014年10月に神奈川県藤沢市石川丸山谷戸で調査したところ,日没前後から日出前までの時間帯に撮影されたことから,先行研究と同様,本種はほぼ夜行性であることが示唆された.したがって,本研究で検討した自動撮影センサーカメラの使用法は,地表棲小型哺乳類の生態研究に活用できることが明らかになった.