- 著者
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朝倉 俊成
名取 和幸
江森 敏夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
- 雑誌
- くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.69-76, 2015
ハイリスク薬であるインスリン製剤やGLP-1受容体作動薬の種類を,患者が識別して使用することは医療安全において極めて重要である.そこで,薬剤の効力や使用時期などのイメージに適合する注入器の色彩を把握するため,色彩の異なる注入器に対するイメージに関するインターネット調査を行った.対象者は4年齢層(9-12歳,20代,40代,70代)のそれぞれについて男女各103名(計824名)とした.13色の注入器の画像を提示し,"薬剤のイメージに適合する注入器の色彩"の選択と"注入器の色によるイメージ"を評価させた.回答結果を多変量解析を用いて分析し,色彩とイメージとの対応関係を明らかにした.結果を総合的に判断し,2種類のインスリン製剤とのイメージの整合性が高く,相互の識別性も高い注入器識別色を以下のように検討した.白色は汚れやすさの点で問題はあるが,「安心」「落ちつき」「信頼」「親しみ」などの印象もあり,本体のベース色などには好ましいといえるが,いずれのイメージに対しても選択率が高いため,識別色としての条件には不適である.赤は速効型製剤のイメージとの適合性が高く,持効型のイメージはもたれにくいので識別色としては優れている.しかし,赤のイメージには「痛そう」「こわい」といったネガティブな印象の選択率が高く,注入器に用いる色として望ましいとはいえない.その結果,速効型インスリンに相応しい識別色には,赤とピンク以外の暖色系が適すると考える.一方,持効型は,「長くゆっくりと効く」「寝る前に合う」との適合性が高い水色や青といった寒色系が好ましいと考える.ただし,速効型と持効型の2種の識別性を高くするためには,それぞれの色の調整と組合せを吟味することが必要である.