著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69, 2019-03-01 (Released:2019-06-23)
参考文献数
26

好きな色がパーソナリティと関係すると思っている人は少なくないが,パーソナリティが色の好みに影響を及ぼす理由についてはほとんど解明されていない.本研究は調査の季節,場所,対象者の年齢,職業を限定し,11年間継続して,延べ2026名(男性931名,女性1095名)の大学生の調査を行った.75色のカラーチャートから,「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」を選択するよう求め,後日YG性格検査を実施し,約半数の色にパーソナリティとの関係が示された.さらに,選択した「好きな色」,「着たい色」,「よく着る色」の色イメージ得点と,選択者のYG検査のパーソナリティ特性の12尺度得点との相関を求めた.男女とも相関が見られ,自らのパーソナリティによく似たイメージの色を好み,着たいと思い,よく着るという知見が得られた.また情緒安定性,協調性,思考的外向に男女の違いが見いだせた.
著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.161, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
5

松田・名取・破田野(2019)では,色そのものが持っている色イメージ(感情的意味)を通して,色の好みとパーソナリティとの関係性を分析した.色イメージ(新編カラーレンジマニュアル100の印象評価)とパーソナリティ特性の相関を求め,有意な差がみられ,特定のパーソナリティの人がその色を好む理由として自分のイメージに似ているから好むことが示唆された.今回はさらに進めて,75色カラーチャートから選択した自分自身の「好きな色」の印象評価と自己イメージとの関係を調査した.男女大学生を対象として「好きな色」を3色選択し,その色のイメージ評定をし,後日好きな色と同じ16の形容詞対による5件法で自己イメージを評定させ相関を求めた.併せて YGパーソナリティ性格テストを試行しパーソナリティとの関係も検討した.自己イメージと好きな色のイメージの同一尺度間での相関(0.24≦|r|, p < .05)は,女性の場合「軽い」「澄んだ」「派手な」「きれいな」「かたい」「情熱的な」「女性的な」の7項目(全16項目の43.8%)に見られ自己イメージに似たイメージの色を好むことが明らかになった.
著者
朝倉 俊成 名取 和幸 江森 敏夫
出版者
一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
雑誌
くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.69-76, 2015

ハイリスク薬であるインスリン製剤やGLP-1受容体作動薬の種類を,患者が識別して使用することは医療安全において極めて重要である.そこで,薬剤の効力や使用時期などのイメージに適合する注入器の色彩を把握するため,色彩の異なる注入器に対するイメージに関するインターネット調査を行った.対象者は4年齢層(9-12歳,20代,40代,70代)のそれぞれについて男女各103名(計824名)とした.13色の注入器の画像を提示し,"薬剤のイメージに適合する注入器の色彩"の選択と"注入器の色によるイメージ"を評価させた.回答結果を多変量解析を用いて分析し,色彩とイメージとの対応関係を明らかにした.結果を総合的に判断し,2種類のインスリン製剤とのイメージの整合性が高く,相互の識別性も高い注入器識別色を以下のように検討した.白色は汚れやすさの点で問題はあるが,「安心」「落ちつき」「信頼」「親しみ」などの印象もあり,本体のベース色などには好ましいといえるが,いずれのイメージに対しても選択率が高いため,識別色としての条件には不適である.赤は速効型製剤のイメージとの適合性が高く,持効型のイメージはもたれにくいので識別色としては優れている.しかし,赤のイメージには「痛そう」「こわい」といったネガティブな印象の選択率が高く,注入器に用いる色として望ましいとはいえない.その結果,速効型インスリンに相応しい識別色には,赤とピンク以外の暖色系が適すると考える.一方,持効型は,「長くゆっくりと効く」「寝る前に合う」との適合性が高い水色や青といった寒色系が好ましいと考える.ただし,速効型と持効型の2種の識別性を高くするためには,それぞれの色の調整と組合せを吟味することが必要である.
著者
朝倉 俊成 清野 弘明 名取 和幸 江森 敏夫
出版者
一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
雑誌
くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.63-73, 2014

インスリン注入器(注入器)の識別性および同定性を,視覚探索実験から定量的に評価した.対象は,プレフィルド型インスリン注入器ミリオペン<sup>®</sup>(MIR),フレックスタッチ<sup>®</sup>(FLT),ソロスター<sup>®</sup>(SOL)の3機種で,追加インスリン製剤と基礎インスリン製剤に相当する各2製剤(計6製剤)の画像(刺激パターン)とした.被験者は,注入器未使用者で本試験に同意したボランティア(平均68.5歳)とした.探索課題では,2種の製剤注入器を20個ランダムに配置した刺激パターンを提示し,一方の製剤の方を順に触れさせた.また,2種の区別しやすさを評定させた.さらに,各製剤の識別色表示面積比も算出した.結果は,MIRの成績が探索,評定ともに最も劣り,FLTとSOLではそれよりも成績が良く,両者はキャップが付いた状態では照度に関わらず同程度の成績であった.しかし,キャップを外すとFLTの識別色表示面積比が大きくなるため,識別性の成績が大きく上昇した.以上のことから,FLTとSOLのカラーデザインは製剤の識別に有用に働いており,キャップを外すとFLTの識別性がさらに向上することが明らかになった.