著者
八村 敏志
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.814-818, 2014

近年,食品成分が免疫系に作用することが示され,これらを利用した新規機能性食品の開発が進められている.腸管には最大級の免疫系が存在し,食品成分の作用を受けるのはこの腸管免疫系である.腸管においては,(1)経口摂取されたタンパク質抗原に対して免疫応答が抑制され,食物アレルギーの抑制機構とされる「経口免疫寛容」,(2)腸管粘膜における感染防御を担い,腸内共生菌を制御するIgA抗体分泌,そして(3)腸管バリアの防御に働くTh17細胞が誘導される,といった特徴的な免疫応答が誘導されることが知られるが,このような応答は,腸管に存在する独特の性質を有する免疫細胞によって担われることが最近の研究で明らかになってきた.本稿では,これら腸管特有の細胞群について紹介する(図1, 概念図で組織的な配置は考慮されていない).特にIgA抗体産生,および「経口免疫寛容」それぞれに重要な腸管樹状細胞について詳細に解説する.また,IgA抗体産生を増強することを見いだしたCD3<sup>-</sup>IL-2R<sup>+</sup>細胞や最近注目されている非血球系細胞として腸管免疫組織を構築するストローマ細胞についても紹介したい.また,これら腸管免疫細胞は,腸内細菌および食品成分の作用が注目される.腸内には,100兆個とも言われる腸内共生菌が生息しており,これらが免疫系の正常な発達,生体の恒常性に重要であることが明らかになってきている.これら腸内共生菌,さらに,プロバイオティクス,プレバイオティクスをはじめ,種々の食品成分は,これら腸管免疫細胞に少なからず作用すると考えられる.

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