著者
八村 敏志
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.54-57, 2007-06-15 (Released:2009-02-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

食品の様々な免疫調節機能が明らかとなりつつあるが、この中でプロバイオティクス、特に乳酸菌は主要なものの一つである。そしてこの乳酸菌による免疫応答の調節を介して、アレルギー、炎症性腸疾患や感染症をはじめとする種々の疾患の予防や軽減が可能であることが明らかになりつつある。本稿では、これら疾患への効果につながる免疫調節作用について述べる。
著者
名倉 泰三 八村 敏志 上野川 修一
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-14, 2004 (Released:2005-03-04)
参考文献数
35

アレルギー発症と腸内細菌叢に関する疫学的調査から, ヒト腸内に生息するBifidobacterium やLactobacillus などの乳酸菌がアレルギーの予防に寄与することが推測される. 乳酸菌はTh1免疫応答を亢進させることで, アレルギー発症に関わるTh2免疫応答を抑制することが報告されている. 難消化性オリゴ糖の摂取は, 腸内に住み着いている乳酸菌, 特にBifidobacterium を増殖させることがよく知られている. 我々は, オリゴ糖の一種であるラフィノースがTh1/Th2応答に与える影響について, 卵白アルブミン特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウスを使って調べた. トランスジェニックマウスへの卵白アルブミン経口投与によって誘導された腸管膜リンパ節細胞のIL-4産生や血中IgE上昇は, ラフィノース添加食によって有意に抑制された. ラフィノース食によって培養可能なマウス盲腸内細菌の菌数変化が認められなかったため, この免疫応答の変化に関係する腸内細菌の種類は不明であるが, ラフィノースの摂取は, 経口抗原によって誘導される不利益なTh2応答を抑制することが示唆された.

1 0 0 0 OA 食品と免疫

著者
八村 敏志
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.509-515, 2005-08-01 (Released:2009-05-25)
参考文献数
54
被引用文献数
1 1
著者
八村 敏志
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.814-818, 2014

近年,食品成分が免疫系に作用することが示され,これらを利用した新規機能性食品の開発が進められている.腸管には最大級の免疫系が存在し,食品成分の作用を受けるのはこの腸管免疫系である.腸管においては,(1)経口摂取されたタンパク質抗原に対して免疫応答が抑制され,食物アレルギーの抑制機構とされる「経口免疫寛容」,(2)腸管粘膜における感染防御を担い,腸内共生菌を制御するIgA抗体分泌,そして(3)腸管バリアの防御に働くTh17細胞が誘導される,といった特徴的な免疫応答が誘導されることが知られるが,このような応答は,腸管に存在する独特の性質を有する免疫細胞によって担われることが最近の研究で明らかになってきた.本稿では,これら腸管特有の細胞群について紹介する(図1, 概念図で組織的な配置は考慮されていない).特にIgA抗体産生,および「経口免疫寛容」それぞれに重要な腸管樹状細胞について詳細に解説する.また,IgA抗体産生を増強することを見いだしたCD3<sup>-</sup>IL-2R<sup>+</sup>細胞や最近注目されている非血球系細胞として腸管免疫組織を構築するストローマ細胞についても紹介したい.また,これら腸管免疫細胞は,腸内細菌および食品成分の作用が注目される.腸内には,100兆個とも言われる腸内共生菌が生息しており,これらが免疫系の正常な発達,生体の恒常性に重要であることが明らかになってきている.これら腸内共生菌,さらに,プロバイオティクス,プレバイオティクスをはじめ,種々の食品成分は,これら腸管免疫細胞に少なからず作用すると考えられる.
著者
名倉 泰三 八村 敏志 上野川 修一
出版者
JAPAN BIFIDUS FOUNDATION
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-14, 2004-01-01

アレルギー発症と腸内細菌叢に関する疫学的調査から, ヒト腸内に生息する<i>Bifidobacterium</i> や<i>Lactobacillus</i> などの乳酸菌がアレルギーの予防に寄与することが推測される. 乳酸菌はTh1免疫応答を亢進させることで, アレルギー発症に関わるTh2免疫応答を抑制することが報告されている. 難消化性オリゴ糖の摂取は, 腸内に住み着いている乳酸菌, 特に<i>Bifidobacterium</i> を増殖させることがよく知られている. 我々は, オリゴ糖の一種であるラフィノースがTh1/Th2応答に与える影響について, 卵白アルブミン特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウスを使って調べた. トランスジェニックマウスへの卵白アルブミン経口投与によって誘導された腸管膜リンパ節細胞のIL-4産生や血中IgE上昇は, ラフィノース添加食によって有意に抑制された. ラフィノース食によって培養可能なマウス盲腸内細菌の菌数変化が認められなかったため, この免疫応答の変化に関係する腸内細菌の種類は不明であるが, ラフィノースの摂取は, 経口抗原によって誘導される不利益なTh2応答を抑制することが示唆された.
著者
上野川 修一 戸塚 護 八村 敏志 飴谷 章夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

アレルギーや自己免疫疾患など免疫系の異常で発症する疾患の激増は大きな社会問題となっており,その安全かつ有効な治療法の開発が熱望されている.本研究では,食品由来タンパク質・ペプチドおよびそのアミノ酸置換体を用い,これらの疾患をより根源的かつ安全に治療する方法の開発を目指した.1.基礎的知見として,アレルゲン,自己類似抗原に対するT・B細胞応答をマウスを用いて解析した.牛乳アレルギー患者に特異的なT・B細胞応答についても明らかにした.2.上記免疫疾患の抑制における抗原分子のアミノ酸置換体の利用について検討した.主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリンの抗原構造を詳細に解析した.この知見をもとに抗原分子のアミノ酸置換体によるアレルゲン特異的免疫応答の抑制について検討し,その有効性を明らかにした.また,α_<s1>-カゼイン由来ペプチドのアミノ酸置換体によるCD8^+T細胞応答制御の可能性を明らかにした.3.上記免疫疾患の抑制における経口免疫寛容の利用について検討した.経口免疫寛容の誘導条件・機構を解析し,CD4^+T細胞,CD8^+T細胞およびB細胞の役割を明らかにした.また,抗原の投与量,投与条件と免疫寛容誘導の関係を明らかにした.さらに,T細胞抗原レセプタートランスジェニックマウスを用いて,経口抗原に対する免疫応答,腸管免疫系の応答を解析した.4.自己免疫疾患,アレルギーの新しい抑制法について検討した.アレルゲン,自己類似抗原由来ペプチドの投与による抑制法,抗T細胞応答を利用した抑制法の有効性を明らかにした.本研究で得た知見は,食品由来タンパク質・ペプチドおよびそのアミノ酸置換体によるアレルギー・自己免疫疾患の新規予防・治療法の開発のみならず,未だに不明な点の多い経口免疫寛容誘導機構,免疫系の抗原認識機構,および上記免疫疾患の発症機構の解明に大きく寄与すると確信する.