著者
松嶋 秀明
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.449-459, 2013

わが国の発達心理学研究と,発達にかかわる臨床実践の双方がよりよい結びつき方になることを模索するために,著者自身が非行少年の更生をテーマとしておこなってきた2つの研究(松嶋,2005, 2012)を素材として紹介しつつ,それらが臨床実践に対してどのように寄与すると考えられるのかについて論じた。非行へのリスク因子として発達障害や被虐待体験に注目したこれまでの諸研究の流れをふまえながら紹介された2研究は,それぞれに共通する特徴として,(1)特別な治療的セッティングではなく,生活をともにすることで営まれている臨床実践であること,(2) 少年の「問題」を自明なものとせず,周囲との関係のなかでいかにそれが見いだされているのかを検討したものであることが挙げられた。これらの研究は,(1)質的研究の方法論をいかして実践を詳述することにより,実践者を疲弊させがちな「問題」状況の相対化をはかれること,(2) 協働性の基盤として機能しえる記述がえられることを寄与として挙げて考察した。

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