著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.474-483, 2013

本研究の目的は,家族とりわけ親子関係の基礎的研究と実践活動とのインターフェース(相互の連携)について検討することであった。まず,発達心理学の先駆的研究であるLevyの「過保護」の概念とSymondsの母親の養育態度の研究が,アメリカ社会のどのようなニーズから着想されたかを記述した。次にBowlbyの愛着理論とAinsworthのSSPが,「IWMの研究」「Dタイプの研究」「情動応答性の研究」「父子間の愛着研究」という4方向に分化・発展し,今日の臨床場面での実践活動とどのようなインターフェースな関係にあるかを概観した。さらに筆者のこれまでに行った基礎的研究と実践活動とのインターフェースの事例を示した。例えば,父娘研究や親意識の形成過程に関する縦断的研究の成果を育児や教育の雑誌を媒介として子育てに悩む親に伝え,特別支援教育巡回指導の中で保護者や先生方への支援活動で活用していることについて述べた。また,日本社会の高齢化にともない,親子である期間が伸長してきているため,両者の関係性の変化や葛藤を扱った新しい研究の必要性について言及した。今後,研究者は自らの着想のもとにオリジナリティある研究をし,その研究成果を平易な表現と的確な媒体(例:雑誌・書籍・講演・インターネット)を使って実践現場に積極的に伝達し,一方で現場の実践者たちは新しい研究知見を自ら学び吸収しようとする姿勢をもつことにより相互のインターフェースな関係は強固なものになるはずである。

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