著者
王 丹凝 王 政 徐 午
出版者
The Gender History Association of Japan
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.45-56, 2014

要旨中国女性学協会(CSWS)は非営利団体として1989 年以来、中国のジェンダー研究および女性学の発展に積極的に関わってきた。CSWS は世界中の優れた研究者の協力を得て学術的資源を蓄積し、ジェンダー理論、フェミニスト実践および女性開発のフェミニスト批判の議論を中国本土に紹介してきた。またフォード財団やヘンリー・ルース財団など著名な財団による資金援助の下、本土とディアスポラのフェミニスト研究者やアクティビストらの情報交換や相互の学びをサポートしてきた。本論は、トランスナショナル・フェミニズムの枠組みを通じてCSWS の経験を理解し、その歩みを振り返る。第一に、国家の関心事がいかにグローバルおよびトランスナショナルな性質を持つのかを考察する。第二に、国境横断的な経験がいかにディアスポラと本土の中国人フェミニストたちのアイデンティティの一部を構成するようになったかを論じる。第三に、最も重要な課題として、ローカルな利益とグローバルな重要性の両方を備えた社会活動・社会運動としてのCSWS の経験がいかに重要な国際的協働の事例であるかを検討する。「大きな出来事や変化過程は本質として確かにトランスナショナルであるが、それらは特定のローカル/ナショナルな文脈を介した方法で知覚され、経験され、交渉される。」リーラ· フェルナンデスディアスポラの中国フェミニストの活動に20 年以上参与し観察してきた者として、この紙面を借りて、独自性のあるトランスナショナルな女性組織、中国女性学協会(Chinese Society forWomen's Studies / CSWS)の発展の歴史を振り返ってみたい。このように批判的に回顧することで、中国と世界のフェミニズムをさらに発展させるための道筋を模索できればと願っている。言い換えれば、この願いはローカルな特有性をそなえつつ、明らかにトランスナショナルな展望をもっている。私たちの分析のレンズのほとんどは中国製ではない。さらに、私たちが批判的な検証を行う対象は、国境によって規定されるものではない。このことはすでにグローバル時代の特徴を示しているといえよう。つまり、私たちはローカルとグローバルな文脈の両方に同時的に属している。グローバルな趨勢というものは多様な地点を横断し、まったく同じかたちで経験されることはないのだが、私たちディアスポラのようにトランスナショナルな媒介者たちは、明らかに類似した現象をグローバルに共有することができる。

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