著者
増田 俊樹 坂井 智行 山田 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-69, 2016

症例は79歳, 女性. 糖尿病性腎症を原病とし, 73歳時に血液透析を導入された. 76歳頃より無尿であった. 糖尿病性神経障害による下肢壊疽のため, 両側下腿切断術を受け入院加療中であった. 術後に血尿, 下腹部痛および透析中の著明な血圧低下を認めたため精査したところ, 腹部造影CTにて膀胱壁の肥厚および膀胱粘膜下のガス貯留像を認め, 気腫性膀胱炎と診断した. 発症時の尿からは<i>Escherichia coli</i>が培養されたが, 血液からは<i>Bacteroides fragilis</i>が培養され, 両者を起因菌とした気腫性膀胱炎から敗血症をきたしたと考えた. 抗生剤投与, 膀胱ドレナージを実施し, 速やかに軽快した. とくに無尿の維持血液透析患者において, 気腫性膀胱炎の報告は少ないが, 発症が認識されないまま経験的抗生剤投与にて軽快している可能性がある. 気腫性膀胱炎の大部分は適切な抗生剤投与と排尿管理で軽快するが, 治療開始の遅れから重篤な経過に至ることがあり, 早期に診断し治療を行うことが重要である.

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