著者
松岡 美樹子 吉内 一浩 原島 沙季 米田 良 柴山 修 大谷 真 堀江 武 山家 典子 榧野 真美 瀧本 禎之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.52-57, 2016

近年, 摂食障害と発達障害との関連が指摘されている. 今回, 発達障害の合併が疑われ, 知能検査の施行が治療方針変更の良いきっかけとなった1例を経験したので報告する. 症例は32歳女性. X−21年に過食を開始し, 過食, 自己誘発性嘔吐や食事制限, 下剤の乱用により, 体重は大きく変動した. X−6年に神経性過食症と診断され, 入退院を繰り返した. X年に2型糖尿病に伴う血糖コントロールの悪化をきっかけに食事量が著明に低下し, 1日数十回の嘔吐を認め, 当科第11回入院となった. 生育歴やこれまでの経過から, 何らかの発達障害の合併が疑われたため, ウェクスラー成人知能検査を施行した. その結果, 動作性IQが言語性IQに比して有意に低値であり, 注意欠陥多動性障害を疑う所見も認められた. 退院後atomoxetineを開始したところ, 過食・嘔吐の頻度が週に1, 2回程度に減少し, その後も安定した状態を維持している.

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