- 著者
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平川 久美子
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.12-22, 2014
本研究では,情動表出の制御における主張的側面,とりわけ幼児期から児童期にかけての怒りの主張的表出の発達について検討を行った。調査は年中児,年長児,1年生の計110名を対象として行われ,仮想場面を用いた課題が個別に実施された。まず,主人公が友だちから被害を受ける状況で,主人公が友だちに加害行為をやめてほしいと伝えたいという意図伝達動機をもっているという仮想場面を提示し,そのときの主人公の表情を怒りの表出の程度の異なる3つの表情から選択し,理由づけを行うよう求めた。課題は,怒りを表出する際に言語的主張をせず表情のみで表出する表情課題(2課題),表情表出と併せて言語的主張を行う表情・言語課題(2課題)の計4課題であった。その結果,言語的主張をしない場面では年中児よりも年長児・1年生のほうが表情で怒りをより強く表出すること,1年生では言語的主張をする場合よりもしない場合のほうが表情で怒りをより強く表出することが示された。本研究から,仮想場面における怒りの主張的表出は年中児から年長児にかけて顕著に発達すること,また1年生頃になると表情と言語という情動表出の2つのモードの相補的な関係を理解し,情動表出を行うようになることが示唆された。