著者
白井 亮久 近藤 高貴 梶田 忠
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.151-163, 2010

琵琶湖固有の絶滅危惧種イケチョウガイと中国からの移入種ヒレイケチョウガイの交雑の実態を探るため,分子マーカーを用いて解析を行った。ミトコンドリアのCox遺伝子と核rRNA遺伝子のITS1領域の塩基配列を用いた系統解析の結果,両種はいずれの分子マーカーでも区別されることが分かった。遺伝的組成を調べたところ,琵琶湖と霞ヶ浦の淡水真珠養殖場では両種の交雑に由来すると考えられる個体がみつかった。琵琶湖の養殖場は自然環境とは完全には隔離されていないため,逸出した養殖個体とイケチョウガイの野生個体との交雑が懸念される。姉沼の野生集団は移植された養殖個体の逸出に由来するものの,唯一交雑の影響を受けていない純粋なイケチョウガイの集団であると考えられるため,保全上非常に重要である。

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