著者
高田 宜武 伊藤 祐子 林 育夫
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.199-207, 2013

バカガイMactra chinensis幼貝の遊泳行動を実験室内で観察した。殻長7~15 mmの小型のバカガイは底面から跳躍後に,足を左右に振って遊泳した。遊泳速度は殻長7~9 mm の個体で毎秒平均6.0 cm,9~15 mmの個体で毎秒平均7.8 cmであった。遊泳距離は平均17.4 cmであった。殻長31~35 mmのやや大きい個体は,跳躍はするものの遊泳行動は認められなかった。水塊中でのバカガイの移動距離は,足を振って遊泳することにより,単なる跳躍よりも4.1倍増加した。したがって野外での遊泳行動は,捕食のリスクを低減するとともにより良い生息場所に潜砂できる可能性を増加させる適応的行動だと思われる。
著者
白井 亮久 近藤 高貴 梶田 忠
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3-4, pp.151-163, 2010-03-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
36
被引用文献数
1

琵琶湖固有の絶滅危惧種イケチョウガイと中国からの移入種ヒレイケチョウガイの交雑の実態を探るため,分子マーカーを用いて解析を行った。ミトコンドリアのCox遺伝子と核rRNA遺伝子のITS1領域の塩基配列を用いた系統解析の結果,両種はいずれの分子マーカーでも区別されることが分かった。遺伝的組成を調べたところ,琵琶湖と霞ヶ浦の淡水真珠養殖場では両種の交雑に由来すると考えられる個体がみつかった。琵琶湖の養殖場は自然環境とは完全には隔離されていないため,逸出した養殖個体とイケチョウガイの野生個体との交雑が懸念される。姉沼の野生集団は移植された養殖個体の逸出に由来するものの,唯一交雑の影響を受けていない純粋なイケチョウガイの集団であると考えられるため,保全上非常に重要である。
著者
上島 励
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1-2, pp.91-94, 2002-06-30 (Released:2018-09-01)
参考文献数
4

Preservation of molluscan specimens for DNA analysis is one of the most important collection management issue in modern malacology. The merits and demerits of two simple methods of DNA preservation, storage in ultracold freezer and alcohol preservation, are compared. Preferred protocols for alcohol preservation are described.
著者
伊藤 寿茂 上杉 翔太 柿野 亘
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3-4, pp.79-88, 2016-11-17 (Released:2016-12-10)
参考文献数
36
被引用文献数
2

Host species for the glochidia of the freshwater unionid mussel Cristaria plicata (Leach, 1815) were identified by determining whether the glochidia infected 27 fish taxa. The fishes were kept in tanks for 11–17 days after glochidial infection, and the numbers of glochidia and metamorphosed juveniles detached from the hosts were counted. Living juveniles of C. plicata detached from Tribolodon hakonensis, Pseudorasbora parva, Oryzias sp., Anabas testudineus, Trichogaster trichopterus, Trichopodus microlepis, Macropodus opercularis, Odontobutis obscura, Acanthogobius flavimanus, Gymnogobius urotaenia, G. castaneus, Tridentiger brevispinis, Rhinogobius giurinus, R. nagoyae and Rhinogobius sp. Therefore, these fishes were identified as suitable host species for the glochidia of C. plicata. Some native fishes that inhabit Anenuma Lake (e.g., Gy. castaneus) are considered to be useful local hosts. Moreover, some labyrinth fishes such as Anabas testudineus, which can climb out of the water and crawl over wet land, may disperse glochidia and juveniles over land in southern areas.
著者
Susumu Ohtsuka Kazunori Hasegawa Taeko Kimura Hiroshi Miyake Yusuke Kondo Ken Iida Honorio Pagliawan Ephrime Metillo
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.93-98, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
39

ウロコガイ科二枚貝ベッコウマメアゲマキScintilla philippinensis Deshayes, 1856の生体がフィリピン・パラワン島で採集されたが,外套膜とその膜上の突起,足を用いてウミウシ類及びカニ類に擬態と考えられる行動が観察された。ウミウシ類型の場合,外套膜を変形させて形態を似せる。カニ類型の場合には形態的類似性だけでなく足も用いて行動も真似る。ウロコガイ上科は他の動物に共生することで知られるが,擬態に関する知見は少ないので,今後のより詳細な研究が待たれる。
著者
佐々木 猛智 齋藤 寛
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.191-194, 2005-12-31

溝腹類は世界中から240種が知られているが,その生態についての情報は乏しい。溝腹類は少数の例外を除いて刺胞動物を食物としていることが知られているが,摂餌の様子が直接観察された例は大型で細長い体をもつカセミミズ属Epimeniaのみで,他の多くは消化管内容物に見られる刺胞から判断されたものである。また刺胞動物の種類も宿主であるヒドロ虫類やヤギ類などに絡みついて採集されもの以外は殆ど分かっていない。著者の1人佐々木は淡青丸による遠州灘沖の生物調査において,イソギンチャクに付着した溝腹類を採集した。溝腹類がイソギンチャクを摂餌する様子を直接観察した例はこれまでないと思われるのでここに報告する。採集された個体はトロール網曳網の刺激によって急激に強く収縮したため,イソギンチャクをくわえたまま引揚げられたと思われる(図1)。採集された種は太短く,体表に中実の針状小棘と,樋状の小棘(図2)をもつことからサンゴノフトヒモ属Neomeniaの種であることは間違いなく,体の大きさや採集された位置,深度(水深763〜796m)からおそらくサンゴノフトヒモNeomenia yamamotoi Baba, 1975と同定される。またイソギンチャクは千葉県立中央博物館の柳研介博士に同定を依頼し,クビカザリイソギンチャク科Hormathiidaeの種であることがわかった。イソギンチャクは海底では上部口盤側は海底から上方に伸びていたと考えられる。したがってサンゴノフトヒモは海底から口盤まで体を起こした状態あるいは這い上がって,摂餌していたと思われる。さらに付着している様子を観察すると,サンゴノフトヒモはイソギンチャクの口盤の縁,触手の密生する部分を吻ではさんでいる。サンゴノフトヒモ属は歯舌や顎板のような食物を切り取る硬い組織を欠いているが,口から突出可能な吻(前腸)をもち,これには種類によって数の異なる複数の括約筋が附属する。また,対になった腹部前腸腺を欠くものの,吻部には多数の単細胞腺が附属する。このようなことから,サンゴノフトヒモ属はSalvini-Plawen(1985)が歯舌を欠く溝腹類の摂餌様式として推測した方法,すなわち餌を消化酵素で溶かしながら吸引する方法によってイソギンチャクを摂餌することが想像される。サンゴノフトヒモ属は外套膜のクチクラ層が薄いがその下にsubepidermal matrix又はground substanceと呼ばれる厚い層をもっている。この組織の性質については知られていないが,今回の観察から,イソギンチャクの触手や槍糸などの刺胞に対する防御機能があることが考えられる。
著者
岩崎 敬二 石田 惣 馬場 孝 桒原 康裕
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.67-81, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
50

Mytilus trossulus Gould, 1850 is a mytilid bivalve with a boreal distribution in the northern Pacific Ocean, northern Atlantic Ocean, and Baltic Sea. The distribution of M. trossulus in Japanese waters was hitherto believed to be restricted to the northernmost island of Hokkaido. However, we discovered dry specimens and dead shells of this species on the northern and central Japan Sea coasts of Honshu Island. Specimens were collected before 1936, before 1948 and in 1951 from Shikaura, Fukui Prefecture (35°56´N, 135°59´E), and were archived at the Fukui City Museum of Natural History as "Mytilus edulis Linnaeus 1758". Dead shells with rotten soft bodies were collected from the Kisakata sandy shore, Akita Prefecture (39°12´24˝N, 139°53´40˝E) on March 29, 2014. In addition, we found old records of the nonindigenous congener M. galloprovincialis Lamarck, 1819 in molluscan lists that were published in Akita, Niigata, Ishikawa and Fukui Prefectures from the 1930s to 1950s. This species was introduced to Japan before 1932 and appears to have been infrequently confused with M. trossulus. In 2007, 2010 and 2014, we conducted field surveys in the regions where the dry specimens and dead shells had been collected but found no M. trossulus specimens. In view of the results of the field surveys and water temperature regime in its distribution range, we believe that the dry specimens and dead shells had drifted from the more northerly Japan Sea coasts of Russia or Hokkaido. The old records of M. galloprovincialis in the molluscan lists may indicate the actual occurrence of the nonindigenous species during the early years of its invasion in Japan.
著者
三浦 一輝 藤岡 正博
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.137-150, 2015

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著者
山下博由 芳賀拓真 Jørgen Lützen
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.123-133, 2011

シャコ類の巣穴に共生することで知られているDivariscintilla属(ヨーヨーシジミ属,和名新称)の新種が,大分県から発見された。これは同属の日本及び北太平洋からの初めての記録である。Divariscintilla toyohiwakensis n. sp.ニッポンヨーヨーシジミ(新種,新称)殻長約4 mm,殻高約3 mm,膨らみは弱く,丸い亜三角形で,殻頂は僅かに前方に寄り,腹縁中央はごく僅かに窪む。白色半透明,薄質で,殻表は平滑で光沢があり,殻の内側には縁部で強まる多くの放射条がある。両殻に1主歯があり,側歯を欠く。外套膜は殻を覆い,前部に2対,後部に1対と1本の外套触角がある。口の直下の内蔵塊前部に1個のflower-like organ(花状器官:和用語新称)を備える。足は前部・後部に分かれ,後部は顕著に伸張し,その後端背面にbyssal adhesive gland(足糸粘着腺:和用語新称)があるが,組織切片では腺構造は確認できなかった。足の底面にはbyssal groove(足糸溝)が前部から後端まで走っている。フロリダ産のDivariscintilla octotentaculata Mikkelsen & Bieler, 1992に,殻や軟体外形が近似するが,D. octotentaculataは触角が1対多く,花状器官を欠く。ニッポンヨーヨーシジミは,Acanthosquilla acanthocarpus (Claus, 1871) シマトラフヒメシャコの巣穴中に小集団を形成して生息し,その壁面に足糸で付着している。タイプ産地:大分県中津市大新田付記:ヨーヨーシジミ属は,ニュージーランド・西オーストラリアに1種,フロリダ・カリブ海に5種,日本に1種が分布するが,いずれもトラフシャコ上科の種の巣穴に生息し,同上科との生態・進化上の密接な関係が示唆される。種小名toyohiwakensisは,タイプ産地の大分県中津市を含む豊前・豊後地方の古名「豊日別」に由来する。属・種の和名は,玩具のヨーヨーのように足糸でぶら下がり上下する生態に着目して命名されたDivariscintilla yoyo Mikkelsen & Bieler, 1989と,そこから派生した英名yoyo clamに由来する。D. yoyoには,ヨーヨーシジミの和名を与える。
著者
伊藤 寿茂 北野 忠 唐真 盛人 藤本 治彦 崎原 健 河野 裕美
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.77-87, 2014

2006年に国内で初めて記録された石垣島のドブガイモドキについて,幼生の採集を試み,幼生が寄生している魚種を調査するとともに,実験飼育下で宿主として機能する魚種を確認した。島内の生息地においてプランクトンネットをひき,幼生の採集を試みるとともに,採集した成貝を継続飼育し,放出した幼生を採集した。幼生の殻の形状は亜三角形で腹縁に鉤を持つAnodonta型であり,殻長,殻高,殻幅の平均はそれぞれ221.5 μm,228.0 μm,108.3 μmであった。次に,現場で採集した幼生の寄生を受けていると想定される6魚種(ギンブナ,グッピー,タイワンドジョウ,ティラピア類,オカメハゼ,タウナギ)と,飼育下で放出された幼生を人為的に寄生させた12魚種(コイ,キンギョ,タイリクバラタナゴ,ドジョウ,ヒレナマズ,メダカ,グッピー,タイワンキンギョ,オカメハゼ,タナゴモドキ,ゴクラクハゼ,ヨシノボリ類)を実験水槽内で継続飼育して,魚体から離脱してきた幼生を観察,計数した。その結果,ヒレナマズ,メダカ,グッピー,タイワンキンギョ,オカメハゼ,タナゴモドキ,ゴクラクハゼ,ヨシノボリ類の8魚種より,変態を完了させた稚貝が出現した。寄生期間中に幼生サイズの増大や外形の著しい変化は見られなかった。全離脱数に占める稚貝の出現率は魚種によって差があり,タイワンキンギョ,グッピー,ヨシノボリ類において,特に出現率が高かった。次に,同生息地において採集した6魚種(ギンブナ,カダヤシ,グッピー,ティラピア類,オカメハゼ,タナゴモドキ)を10%ホルマリン水溶液で固定して,魚体に寄生した幼生の状態を観察,計数したところ,グッピーとティラピア類の体に寄生が見られた。寄生は鰓や各鰭のほか,鰓蓋の内側,鰓耙にも見られた。幼生の相対寄生密度および被嚢率はグッピーの方が高かった。石垣島を含むドブガイモドキの生息地においては,その幼生の宿主として,在来種,外来種を含む複数の魚種が宿主として機能している可能性がある。特に,石垣島では,生息する魚の大部分を外来種が占めており,中でもグッピーが主な宿主として機能していることが判明した。このことから,石垣島内における宿主魚類の移入による分布拡大が,ドブガイモドキの分散に寄与した可能性がある。
著者
酒井 治己 高橋 俊雄 古丸 明
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1-4, pp.109-121, 2014-03-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
54

Allozyme variability in the androgenetic freshwater clams Corbicula leana from Japan and the exotic C. fluminea were investigated. A total of 462 individuals of C. leana from 19 localities throughout the distribution range of the species were monomorphic at three allozyme loci as well as in purple inner shell color. Corbicula fluminea from three localities, on the other hand, was variable in shell color; with white, purple, white with purple flash, or deep purple examples. The present results suggest that they may include several clonal lines with different shell colors and allozyme genotypes. We discuss possible diversification of freshwater clams among bisexual species and hermaphroditic clones through clonal capture, genome capture, or ploidy elevation.
著者
奥谷 喬司 小島 茂明 金 東正
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.29-32, 2004-06-30
被引用文献数
1

シロウリガイ属はこれまで北東・北西太平洋から多様の種類が知られてきたが,南西太平洋からはニュージーランド沖とラウ海盆からこの属の出現が予報的に報じられているのみで,分類学的な詳細は公表されていない。ところが,1994年にドイツのゾンネ号が行ったニューアイルランド海盆の調査中,リヒル島沖のエジソン海山から本属の標本を採集していた。今回その後同地点から採集された標本の形態学的および分子系統学的研究(Kojima et al.,未発表)を行った結果,我が国本州沖の南海トラフに棲むナンカイシロウリガイに近似の未記載種であることが判ったので記載した。Calyptogena(Archivesica) edisonensis n. sp.エジソンシロウリガイ(新種・新称)殻長99.8mm(ホロタイプ)。殻頂は前方1/4〜1/5くらいに偏っていて,殻の後域は僅かに広がる。殻皮は薄く,殻頂域では剥離している。〓歯は放射状。浅い殻頂下洞がある。前足牽引筋痕は明らか。エジソン海山の水深1450m。あらゆる点でナンカイシロウリガイに似るが,ナンカイシロウリガイでは前足牽引筋痕が深い孔状になる特異性がある。
著者
奥谷 喬司 藤原 義弘 藤倉 克則 三宅 裕志 河戸 勝
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.61-64, 2004-06-30
被引用文献数
4

約1年半前に鹿児島県野間岬沖の水深約200〜250mに沈下されたマッコウクジラの死体に形成される生物群集の調査を行った結果,鯨骨上にはヒラノマクラ(少数のホソヒラノマクラ混在)の濃密な群生がみられた。本種の外套膜後端は筒状に丸まり,極めて長い"入水管"を形成し,また完全な管状になった出水管を持つほか,足もよく発達して活発に動き回るというイガイ科としては極めて特異な機能形態を持つことが判った。長い水管のため,本種が群生しているとあたかも鯨骨が細いマカロニで被われているようにさえ見える。ヒラノマクラの生体の観察は今回初めてと思われるので,速報する。
著者
幡野 真隆 石崎 大介
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3-4, pp.99-104, 2016-11-17 (Released:2016-12-10)
参考文献数
20

Feeding experiments on juveniles of the freshwater pearl mussel Hyriopsis schlegeli were conducted using upwelling chambers. Growth of juveniles mainly fed with a mixture of two green algae, Chlorella homosphaera and C. vulgaris, in 2013, was compared with that of specimens fed only with C. vulgaris in 2012. Juveniles in 2013 grew much faster than those in 2012 and their mean shell length exceeded 20 mm, achieving record maximum size. The result implied that using upwelling chambers and feeding small green algae are effective for successful culture of H. schlegeli.
著者
Paul Callomon Amanda S. Lawless
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1-2, pp.13-27, 2013-01-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
27

主に貝殻と歯舌の形態に基づいてスジマキイソニナ属(新称)Lirabuccinum Vermeij, 1991の現生種の再検討を行い,黄海から見出された1新種を記載した。さらに,関連するタクサのタイプを検討し,Searlesia constricta Dall, 1918, Euthria hokkaidonis Pilsbry, 1901 とE. fuscolabiata E. A. Smith, 1875のレクトタイプを指定した。Lirabuccinum dirum (Reeve, 1846) スジマキイソニナ属のタイプ種,カリフォルニアからアラスカまでのアメリカ西岸に分布。Lirabuccinum fuscolabiatum (E. A. Smith, 1875) エゾイソニナ北海道から東北沿岸太平洋側,日本海,および朝鮮半島南部に分布。土佐湾からも記録がある。Fususmodestus Gould, 1860 [non philippi, 1844]トバイソニナ,Searlesia constricta Dall, 1918チョウセンイソニナは異名。Lirabuccinum hokkaidonis (Pilsbry, 1901) ホソエゾイソニナ(新称)本種はエゾイソニナの亜種,あるいは近年は主に異名として扱われてきた。今回,タイプ標本を初めて図示し,多くの標本を比較することにより,両者は独立した種であることが明らかとなった。本種はエゾイソニナよりも細長く,縦肋がより細く密に並ぶ。これまで北海道北西岸から男鹿半島の間の海域からのみ採集されている。Lirabuccinum musculus n. sp. コネズミツノマタ(新称)見かけ上イトマキボラ科の種に類似するが,軟体部の外部形態と歯舌の形態から本属に含まれることが分かった。タイプ産地(山東省威海沖の黄海,水深 30~ 60 m)からしか知られていない。これらの種を貝殻の形態で詳しく比較すると,まず貝殻の厚さでスジマキイソニナが北西太平洋産の3種と著しく異なる(前者の方が厚い)。また,貝殻断面でみた殻口内の螺状襞の構造などにも両者に明らかな違いが認められ,太平洋の両岸で大きく分化している可能性が示された。しかし,歯舌や軟体部外部形態の違いに大きな違いがないことから,属レベルで区別するためには化石種との比較などのさらなる証拠が必要である。
著者
森井 悠太
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1-4, pp.15-26, 2019-05-15 (Released:2019-06-06)
参考文献数
33

森林の皆伐は森林生態系へ壊滅的な損害を与えうる。皆伐によって森林生態系の生物量や種多様性が著しく減少することが知られている。しかしながら,皆伐の長期的な影響を評価した研究は少ない。本研究では,原生林と二次林の林床土壌中の陸産貝類相を定量的に調査し,過去の皆伐の影響の評価を試みた。北海道,黒松内低地帯に位置するブナの優占する原生林と二次林をそれぞれ2箇所ずつ調査地とし,調査地それぞれの林床に50-cm × 50-cmの区画をそれぞれ6箇所,林床に設置した。リター層中の陸産貝類を目視で摘出したのち,双眼実体顕微鏡を用いて種を同定した。原生林と二次林との間で種密度と個体密度を比較したところ,種密度・個体密度共に二次林よりも原生林において有意に高い値が示された。原生林2箇所のうちのひとつ,歌才ブナ林では特に陸産貝類相の多様性が高く,50-cm × 50-cmの区画で平均239.2個体・7.2種もの陸産貝類が採集された。一方,二次林では2箇所の平均で12.3個体・4.8種を記録するのみであった。その中でも,殻長2.0 mm以下の微小貝の個体密度が二次林において有意に低かった。加えて,成長錐を用いて二次林の樹齢を推定した結果から,調査対象とした2箇所の二次林はいずれも100~150年前に伐採されたことが示された。これらの結果は,森林伐採が100年以上にも渡って林床の陸産貝類相に影響を与えることを示している可能性がある。
著者
髙野 剛史 田中 颯 狩野 泰則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1-4, pp.45-50, 2019-05-15 (Released:2019-06-06)
参考文献数
29

ハナゴウナ科Eulimidaeの腹足類は,棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科のMucronalia属は形態および生態情報に乏しいグループで,タイプ種のフタオビツマミガイM. bicinctaは生貝での採集報告がなされていない。Warén(1980a)による殻形態に基づく属の概念では,つまみ状の原殻,内唇滑層,ならびに中央部の突出した外唇を有することが重要視されている。また2既知種がクモヒトデ寄生性であることが知られており,これが本属貝類に共通の生態とみなされている。本報では,神奈川県真鶴町の潮下帯より採取されたアカクモヒトデOphiomastix mixtaの腕に外部寄生するMucronalia属の1新種を記載した。Mucronalia alba n. sp.オビナシツマミガイ(新種・新称)原殻がつまみ状に突出すること,殻口内唇に滑層を有すること,また外唇は中央部が突出し横からみると大きく曲がることから,Mucronalia属の一種であると判断された。殻は本属としては細く塔型,最大5.5 mm,白色半透明である。後成殻は6.6巻,螺層は時に非対称に膨れ,螺塔は成長に伴い不規則に太くなる。外唇縁痕は不定期に現れ,僅かに褐色を呈する。殻口は細長い卵型。軸唇はまっすぐで,体層の軸から20°傾く。原殻は淡い褐色。本種の殻形は,同じく日本に産するヤセフタオビツマミガイM. exilisと,オーストラリアのクイーンズランドから記載されたM. trilineataに似る。一方これら2種は殻に褐色の色帯を有し,また軸唇の傾きが弱い。オマーンをタイプ産地とするM. lepidaとM. oxytenes,メキシコ西岸のM. involutaはいずれも本種と同様白色の殻をもつが,前2種は殻が太く螺層の膨らみが弱い点で,またM. involutaは本種と比してはるかに小型である点で区別される。タイプ種であるフタオビツマミガイM. bicincta,オマーンに産するM. bizonula,スリランカのM. exquisitaは,色帯のある円筒形の殻をもつ点で本種と明瞭に異なる。上述の種のほか,コガタツマミガイ“M.” subulaやヒモイカリナマコツマミガイ“M. lactea”がMucronalia属として扱われることがある。しかしながら,前者は殻口外唇が湾曲せず,カシパンヤドリニナ属Hypermastusに含めるのが妥当である。後者は,殻形態,寄生生態および予察的な分子系統解析(髙野,未発表)により,セトモノガイ属Melanellaの一種であると考えられた。しかしながら,Eulima lactea A. Adams in Sowerby II, 1854が同じMelanellaに所属すると考えられるため,ヒモイカリナマコツマミガイに対するlactea A. Adams, 1864は主観新参ホモニムとなる。そこで,ヒモイカリナマコツマミガイに対する代替名としてMelanella tanabensisを提唱した。東アフリカのザンジバル諸島産で,同じくヒモイカリナマコに内部寄生する“Mucronalia” variabilisもセトモノガイ属に含めるのが妥当と考えられ,本論文で属位を変更した(Melanella variabilis n. comb.)。
著者
陳 充 奥谷 喬司 梁 前勇 邱 建文
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1-4, pp.29-37, 2018-06-08 (Released:2018-06-29)
参考文献数
34

南シナ海北部,中国海南島南西沖で新しく見つかったメタン湧水域“海馬湧水”(水深1,372 m~1,398 m)からシロウリガイ類の未記載種が発見されたので新種として記載した。“Calyptogena” marissinica n. sp. ハイナンシロウリガイ(新種・新称)ホロタイプの殻長は103.7 mmであるが,パラタイプの一つ(死殻)は殻長188.0 mmに達する。この類としてはやや太短く,殻高は殻頂の後方で最大となり殻長の20%前後。殻皮は光沢のある藁色で,成長脈が著しい。月面も楯面も無い。靭帯は後背縁の1/2に達する。右殻の中央主歯(Fig. 3: 1; 以下同様)は三角錐状で殻頂下主歯前肢(3a)は弱いが後肢(3b)は強く,前肢と150°をなす。左殻の中央主歯は二叉し(2a, 2b),殻頂下前主歯は不明瞭であるが,後主歯(4b)は放射状に配置する。歯丘(nr)はよく発達する。殻頂下洞は無い。備考:本種のミトコンドリアCOI領域のデータから,本種は南海トラフの水深2,084 mから記載されたニヨリシロウリガイCalyptogena similaris Okutani, Kojima & Ashi, 1997と同じクレードに入ることが明らかである。ニヨリシロウリガイとは一層細長く湾入した腹縁を持つことなどから一見して区別ができるが,現在いわゆる広義のCalyptogenaは形態よりも分子系統解析によって属が細分化されつつあるのにも拘らず,ニヨリシロウリガイは何れの既存の“属”にも配置されていない現状から,本新種の属位は敢えてCalyptogenaのままとして扱った。
著者
山崎 友資
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1-2, pp.41-52, 2008-08-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
32

津軽海峡より採集されたシャクシガイ科の新種を記載する。ホロタイプは2003年に津軽海峡北海道側大陸斜面から採取され,その後,2006年に北海道大学水産学部練習船うしお丸がおこなった津軽海峡本州側大陸斜面の底生生物群集の調査からも確認した。本種はAllen & Morgan (1981) の分類に従って,シャクシガイ属 Cuspidaria の Rhinoclama 亜属に分類される。しかし,最近の研究では Rhinoclama 亜属を属として扱う傾向があること(Krylova, 1994; Coan et al., 2000; Marshall, 2002; J. Poutiers, pers. comm.,2007),さらに Rhinoclama 亜属の嘴部形態を比較・検討したところ3グループに分類できることから,著者は Rhinoclama を属として扱った。以下に,3グループの特徴と所属する種を記述する。1) brevirostris species-group (= Austroneaera 亜属):嘴部の発達は微か。所属する種は abrupta, aupouria, brevirostris, brooki, dorsirecta, finlayi, raoulensis, similis, tangaroa。2) alta species-group (= Rhinoclama 亜属の1部分):嘴部は直線的に発達する。所属する種は alta, dubia, halimera, semistrigosa, testai。3) adamsi species-group (= Rhinoclama 亜属の1部分):嘴部は上を向く。所属する種はadamsi, benthedii, filatovae, nitens, notabilis, rugata, simulans, teres, tsugaruensis n. sp., valdiviae。現在,以下の3種については,分類学的位置づけが不明確なため,これら3グループには含めない; imbricata, semipellucida, trailli。土田・黒住(1996)によって岩手県大槌湾中央部から Rhinoclama sp. として無図版で報告された種類(CMB-ZM 114012)は,本種と同一種であることが判明したので,この標本もパラタイプに指定した。ウシオシャクシガイ(新種・新称)Rhinoclama (Rhinoclama) tsugaruensis n. sp.貝殻は本属としては小型,殻長は 5.87 mm,球形,膨らむ,滑らか,白褐色。嘴部は短く,上を向き,新鮮な標本では,淡い黄色の殻皮をかぶる。成長線は共心円状で弱く,嘴部に向かうにつれて強くなる。殻頂は中心より外れ,後ろに傾く。原殻1はおおよそ 200 μm,楕円型で滑らか。原殻2はおおよそ10 μm,滑らか。前縁は丸く,滑らかに縁取られる。前腹縁は弱く膨らむ。嘴状部には2つの稜角があり,背稜角はたいてい背縁と平行で,腹稜角は殻頂から腹縁の後部境界へ斜めに走る。背稜角はたいてい不明瞭であるが,明瞭となるものもある。右殻には明瞭な前鉸歯と背鉸歯があり,内部の腹縁は,左殻の狭い腹縁と一致して重なる。左殻には前鉸歯も背鉸歯もない。内部の外套痕は広く湾曲し,深く凹み,深い部分でさらに凹むことで特徴付けられる。貝殻は膨らみ,後部は平坦で両殻の境界は,腹縁の共心円状の成長線によって区別できる。和名のウシオは,北海道大学水産学部練習船うしお丸に由来する。学名の tsugaruensis は,採集地の津軽海峡に由来する。タイプ産地 : 津軽海峡北海道側斜面水深 25 m。分布 : 津軽海峡北海道側斜面水深 25 m ~本州側斜面 80 m ~200 m。岩手県大槌湾中央部水深 52 m ~55 m。