著者
石川 茜恵
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.142-150, 2014

本研究は,青年における過去のとらえ方のタイプの違いによって目標意識がどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。青年期を対象とした従来の時間的展望研究は青年における未来の側面を重視し,検討してきた。従来の研究の問題点として,研究対象が未来に偏重しており,過去に関する研究が少ないという点があった。現在において過去をどのようにとらえるかによって未来への意識が異なる点が示唆されており,この点の検討により青年の時間的展望をより理解できると考えられた。そこで本研究では,現在において過去をどのようにとらえているのかというタイプに基づいて目標意識の差異を検討した。大学生314名を対象に過去のとらえ方と目標意識から構成される質問紙調査を実施した。まず,過去のとらえ方尺度の5下位尺度を元にクラスタ分析を行った結果,異なる過去のとらえ方の特徴を持った「過去軽視群」「葛藤群」「統合群」「とらわれ群」の4タイプが得られた。次に,得られた4タイプを独立変数,目標意識を従属変数とした一要因分散分析を行った。その結果,現在において過去を過去として受容し,過去を現在や未来とつながるものとしてとらえていた統合群は,過去にとらわれていたり軽視していたり,過去が現在や未来につながっていないと推測された他の群よりも,将来への希望が高く,将来目標を持っていた。得られた結果が示す青年像と今後の課題が示された。

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