著者
福井 康貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.309-324, 2014

本研究の目的は,自己に対する希望,社会に対する希望,それぞれの規定要因の関係を,日本に居住する中高年者を対象として明らかにすることである.先行研究では,自己に対する希望の規定要因は検討されてきたが,それが社会に対する希望の形成につながるメカニズムは明らかになっていなかった.そこで,2010年に実施された「中高年の生活実態に関する全国調査」のデータを用いて,自己に対する希望と社会に対する希望の関連を,階層や社会関係などの要因に着目して検討した.分析の結果,(1) 自己に対する希望が階層や社会関係などの直接的な影響を受けていること,(2) これらの要因は自己に対する希望を通じて社会に対する希望に間接的な影響を与えていること,(3) 自己に対する希望と社会に対する希望の間には,他の変数を統制したうえでも,相互に高め合う関係があることが示された.以上の結果から,自己に対する希望を規定する社会的な次元の不平等を取り除くことにより,自己および社会に対する希望の格差を解消するという道筋が示唆された.

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