著者
和田 卓也
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.270-270, 2016

<p>【はじめに】</p><p>サッカー競技は、スプリント動作やカッティング動作の反復、下肢でのボールコントロールなどの競技特性から下肢障害が多いとされている。また、障害の中でも股関節周辺部の問題(肉離れ、鼠径部痛症候群など)は多く発症しており、障害予防的な観点からも注目すべき点である。そこで今回、股関節機能に焦点を合わし、高校サッカー選手にメディカルチェック(以下、MDC)を実施した。その結果から、股関節つまり感の存在とその障害との関連を検討することを目的とした。</p><p>【対象と方法】</p><p>対象は、高校男子サッカー部員20名40脚中、立位股関節屈曲角度(以下SHF角度)時に股関節つまり感があった11名17脚(年齢16.2±0.6歳、身長171±7.3cm、体重61.4±7.6kg、競技歴9.3±1.9年、利き足:右10名 左1名)とした。MDC測定項目は、指床間距離(以下FFD)、踵殿間距離(以下HBD)、Thomas‐T、Anterior impingement(以下AI)、SHF角度、股関節屈曲・外旋・内旋可動域を測定した。さらに障害歴(現在も症状があるもの)についても問診にて聴取した。これらの各項目間での関係性を統計ソフトR version2.8.1を使用し、シャピロウィルク検定、スピアマンの順位相関係数を用いて算出した。</p><p>【結果】</p><p>統計の結果、FFD・HBD・Thomas‐T・SHF角度・股屈曲角度は相関がみられなかったが、股外旋と股内旋(r‐0.74、p<0.01)で相関がみられた。各項目の結果は、FFD 5.4±5.7cm、HBD -11.4±1.8cm、Thomas‐T -5.4±1.6cm、AI陽性 2名、SHF角度 101.5±6.6度、股関節可動域 屈曲129.4±6.3度、外旋45.9±7.3度、内旋36.5±6.1度、利き足側10名、軸足側5名、両側6名。障害がある選手は8名で、障害歴は、大腿部肉離れ5件、足関節捻挫4件、シンスプリント1件、鼠径部痛1件、腓骨筋腱損傷1件、肋骨痛1件。また、過去に骨盤帯骨折(坐骨骨折、恥骨剥離骨折)の経験ありが2件であった。</p><p>【考察】</p><p>股関節外内旋可動域において負の相関が得られた。これは、外旋可動域が大きく内旋可動域が小さく、その差が大きいことを示している。外旋筋群短縮により股関節の求心位が失われることで、代償筋の過活動や腸腰筋の機能不全が起こり、それが股関節屈曲時のつまり感として現れている可能性が考えられる。また、障害歴は大腿部肉離れや足関節捻挫の件数が多い結果となった。AIに関しては、2名中1名はつまり感と骨盤帯の骨折既往を同時に抱えており、つまり感は器質的疾患の存在も判断し得る可能性が示唆された。以上のことから、股関節のつまり感は、股関節に何らかの機能不全があることを示しており、下肢の土台とされる股関節が機能不全となることで、膝関節や足関節の連動性に問題が生じ、障害に繋がるのではないかと考える。</p><p>【理学療法学研究としての意義】</p><p>MDCの結果、実際につまり感を抱えながら競技を行っている選手の存在が明らかになった。つまり感の有無は、器質的疾患や股関節の機能不全が存在している選手の簡易的な選別になる可能性があり、これに対して、適切な評価と選手へのフィードバックを行うことで、二次障害の予防やパフォーマンス向上に繋がると考える。今後、MDCの測定項目などをさらに検討し、つまり感と障害との関係について探求していきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者およびサッカー部所属の監督とコーチには、ヘルシンキ宣言に基づき、事前にMDCの目的と内容を文書及び口頭で十分説明し、同意を得た。</p>

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