著者
小野田 亮介
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.367-378, 2014

社会的領域理論では,思考の基盤となる概念を「道徳」,「慣習」,「個人」の3領域に区別する。そして,実際の問題に対して人は3領域のいずれか,あるいは複数領域に基づく「領域調整」によって判断や行為を行うと考える。そこで本研究では,説得を目的とした意見文産出において,児童が説得対象者に合わせていかに領域調整を行うかについて検討した。まず,予備実験を実施し,本実験で用いる校則に関する意見文課題の適性を評価し,分析枠組みとなる理由づけカテゴリを作成した。本実験では,小学校4年生の1学級30名を対象に意見文課題を実施した。説得対象者として,校則に関する知識量の多い「親友」と,知識量の少ない「転入生」を設定し,(1)説得対象者に合わせた児童の領域調整の特徴,(2)領域調整に対する児童の困難感,の2点について検討した。その結果,転入生に対しては慣習領域の理由が多く産出され,親友に対しては個人領域の理由が多く産出されていた。また,説得に困難さを感じる児童ほど,領域調整によって質の異なる理由産出を行う傾向が認められた。以上より,児童は説得対象者に応じた領域調整の必要性を認識し,説得対象者に合わせた理由産出をしていることが明らかになった。ただし,領域調整の必要性を認識することで,かえって多様な理由を産出できない児童がいることも示された。

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