- 著者
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尾張 豊
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.59-74, 1998
従来、公立学校の教育成果の低下の原因に関する研究が数多くなされてきた。その多くは原因を画一化教育や過度な受験教育などの教育内容の欠陥に求めている。一方で、その原因を学校組織に内在する欠陥に求める議論はほとんどなされてこなかった。<BR> そこで、本稿ではTirole(1986)の提起した3階層組織モデルを学校組織に適用し、多段階ゲームを用いてその原因の追求と教育成果の向上のための改善案について考察した。<BR> 主な結論は以下のとおりである。αプリンシパルがエージェントにその努力、あるいは教育成果に関係なく一定の報酬を提示すれば、エージェントは低い努力を実行する。βエージェントの努力水準が観察できる場合、プリンシパルはエージェントの努力水準に応じた報酬を提示すればよい。γ生徒の能力が観察できない場合、プリンシパルはエージェントに教育成果に応じた報酬を提示すればよい。δスーパーバイザーがエージェントと共謀してプリンシパルに嘘の報告をする場合には、プリンシパルは共謀を防止するための報酬を支払わなければならない。