著者
中川 麻子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

「美術染織」とは、明治から大正時代にかけて制作された絵画的な染織作品であり、近代染織を語る上で重要な存在である。本稿では明治時代初期から1893年(明治26年)頃を対象にし、国内外の博覧会に出品された染織作品について検討を行った。1876年(明治9年)フィラデルフィア万博出品の成功を受けて、内国勧業博には多くの絵画的な染織作品が出品された。また業者によって積極的に新しい技術の開発が行われ、1882年(明治15年)前後にはますますこの傾向が強まった。1886年(明治19年)京都色染織物繍纈共進会の出品分類に現れた「美術色染」「美術織物」の語は、染織分野に初めて「美術」の語が持ち込まれた例であり、はじめて《美術染織》概念が誕生した。1889年(明治22年)パリ万博では染織作品が「美術」とは認められなかった。しかし1893年(明治26年)シカゴ万博において、平面的かつ大型で、観賞用の性質が強い作品が美術部出品を果たし「美術的織物」と呼ばれ絶賛された。このシカゴ万博を機会に《美術染織》の概念と「平面」、「大型」、「鑑賞用」という作品形式が確立した。

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