- 著者
-
小平 純子
前田 晃秀
- 出版者
- 視覚障害リハビリテーション協会
- 雑誌
- 視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.100, 2012
東京都盲ろう者支援センターでは、盲ろう者を対象に(1)コミュニケーション訓練、(2)生活訓練、(3)パソコン等電子機器活用訓練等を提供している。本論では東京都盲ろう者支援センターで実施した訓練のうち、歩行訓練について、その実施状況や事例を分析し、盲ろう者に歩行訓練を提供する際の課題を検討した。<BR> 東京都盲ろう者支援センターが設立した2009年5月から2011年2月にかけて延べ97人に537回の訓練を実施した。そのうち、歩行訓練は7人に23回実施した。利用者を障害の状態・程度別に分けると、「全盲ろう」が2人、「弱視ろう」が3人、「弱視難聴」が2人であった。歩行訓練における目的は、「手引き時の白杖操作」が2人、「単独歩行時の白杖操作」が5人、「ルート歩行」が1人であった。<BR> 視覚活用が可能な盲ろう者4人(弱視難聴1人、弱視ろう3人)については、路面の外側線、道路標示等を視認することによって、単独歩行の技術を身につけることができた。視覚活用が困難な全盲ろうの盲ろう者からも単独歩行の訓練の希望があり、道路横断の場面では、コミュニケーションカードを提示して、援助依頼によって横断する方法を提示した。しかしながら、本人は援助依頼をすることを好まなかったため、安全性を考慮し、単独歩行の訓練を断念することになった。<BR> 盲ろう者は視覚に加え、聴覚にも障害があるため、環境音の把握が困難になり、単独歩行時に安全性が確保できなくなる。その一方で、限られた社会資源の中で、ある一定の場面や条件において、単独での歩行が実現できるよう支援していく必要がある。今後、障害の状態・程度や盲ろうになるまでの経緯、場面などの要因により、どのように単独歩行時の安全性が変化するかを検討していく必要があると考えられる。