著者
辻 良三
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S9-1, 2014

発達神経毒性とは、重金属や化学物質等のばく露による、胎児期あるいは生後発達期の神経系の構造および機能に対する有害影響と定義されている。メチル水銀による胎児性水俣病やエタノールによる発達障害は、その例としてよく知られている。最近、LD(学習障害)、ADHD(注意欠損・多動性障害)、自閉症等の疾病を有する児童が増加している報告されている。また、子どものいじめ、引きこもり、自殺等の心の問題は社会問題となっている。これらの原因については、明らかになっておらず、その原因のひとつに、身の回りの化学物質のばく露による発達神経毒性が疑われている。環境省は、大規模な疫学調査であるエコチル調査を開始し、化学物質との関連性を調査している。農薬等の一部の化学物質については、動物を用いた毒性ガイドライン試験である発達神経毒性試験を実施され、その影響が検討されてきたが、高額の費用、長い試験期間、多数の動物使用等の問題があり、膨大な数の化学物質に対応するのは困難であり、より簡便な方法が望まれている。そこで、種々の生物や細胞を用いた<i>in vivo, in vitro</i>評価系の開発が進められているが、まだ十分と言える評価系は出来ていない。その理由のひとつとして、種々の既知の化学物質による発達神経毒性自体の研究が十分になされていないことが挙げられ、発達神経毒性の発現メカニズムの解明や評価に適したバイオマーカーの開発が進んでいないことが考えられる。これらの研究の今後の一層の研究の進展が望まれる。本講演では、発達神経毒性の概要及び研究動向について説明するとともに、ラットにおけるエタノールの幼若期ばく露による脳発達への影響のメカニズム研究の例についても紹介したい。

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