著者
田甫 綾野
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

1.はじめに<br> 中学校では、幼児とのふれあい体験活動を全ての生徒が体験すべき活動となっている。筆者はこれまで、中学生と幼児(3歳児~就学前児)との触れ合い体験活動の観察を通して、幼児と中学生の質の高い交流とはどのようなものか明らかにすることを試みてきた。その結果、ただ、かかわる機会を持てば良いのではなく、幼児と中学生がともに同じ目的をもち、身体的な同調を伴うような活動を設定することが有効であるということが明らかとなった。<br> これまでは、幼児との触れ合い体験を研究の対象としてきたが、本発表では、かかわりの対象が乳児および低年齢の幼児(0~2歳児)の場合の事例を検討し、交流活動が双方にとってどのような学びをもたらすのか、また乳幼児の保護者にとってどのような効果があるのかを明らかにすることを目的とする。&nbsp;<br><br>2.研究方法および研究対象<br>(1)研究対象<br>①山梨県内にあるA中学校<br>⚫︎家庭科の授業における「赤ちゃん抱っこ体験」(子育て支援活動を行っているNPO法人が行っている活動に依頼)<br>⚫︎参加者;家庭科の授業を受講しているA中学校2年生および乳幼児(主に0歳~2歳児)とその保護者<br>②東京都内の区立B児童館 子育てサロン「ひだまり」<br>⚫︎ B児童館で行われている乳幼児と遊ぶキッズボランティア活動&nbsp;<br>⚫︎参加者;キッズボランティアに参加している小学校1、2年生および「ひだまり」遊びにきている乳幼児(0歳~1歳半児まで)とその保護者<br>(2)研究方法①②ともに、参与観察を行い、手記記録および映像による記録を行った。①は動画および静止画②については静止画のみの記録である。&nbsp;<br><br>3.結論<br>乳児および低年齢の幼児との交流の場合、乳幼児側からのアプローチが高年齢幼児と比べて少ないため、交流する児童・生徒は積極的に行動しないと、かかわりをもつことができない。また、かかわり方も難しく、戸惑う児童、生徒も多くみられた。しかしながら、今回の活動は両者とも保護者が参加しており、保護者が自分の子どもの好きな遊びや発達の様子などの細かいことを教えてくれたり、児童生徒が戸惑う部分のサポートをしてくれたりしていた。その他にも母子手帳やエコー写真などを持参し、子どもを授かり出産するまでの話を涙ながらに話してくれるなど、子どもの愛おしさ、子育ての大変さなどを生徒に伝えてくださっていた。乳児や低年齢幼児との交流活動の場合、保護者の方の存在も大きいと考えらえる。<br> 「キッズボランティア」については、今回の観察対象は小学生が活動の主体であったが、継続的に乳幼児とかかわれるということで小学校低学年の児童であっても、学びの多い活動となっていた。継続的にかかわることが可能であれば学習効果は高まると考えられる。今後、中学校・高等学校の家庭科の授業としても児童館との連携、また総合的な学習の時間や他教科との連携も考えていけるとよいのではないだろうか。<br> 乳幼児と「触れ合う」という意味では、今回観察したふたつの活動ともよい交流になったと思われるが、「赤ちゃん抱っこ体験」については、一度きりの活動であり、ただ「触れ合う」という目的のみでは「もったないない」「もの足りない」と思われる。例えば、生徒が作ったおもちゃを与えて遊んでみるとか、既成のおもちゃであっても生徒自身が選択して赤ちゃんに与えられるようにするなど、他の保育分野の学びと合わせてこの活動を位置付けることが必要なのではないだろうか。中学校については、学習の対象として乳児は入っていないが、乳児や低年齢幼児との触れ合い体験も、保護者との交流、子育てや出産の生の声を聞けるという意味で有効な学習になると考えられる。

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