著者
登田 美桜
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.JH-5, 2015

食品安全に関する措置は科学的根拠に基づかなければならないというのが国際ルール(WTO-SPS協定)である。当研究所は我が国の食品安全行政を科学的視点から支援すること(レギュラトリーサイエンス)を業務の一つとしている。<br>食品安全上の問題は、食品中に非意図的に存在する汚染物質(重金属、天然毒素、製造副生成物)や病原微生物・ウイルス、意図的な使用により存在する食品添加物・香料、残留農薬・動物用医薬品、遺伝子組換え食品、欺瞞的な行為による混入物等、その範囲は多岐にわたり、取り組む問題も多種多様である。食品安全行政では、それらの問題に優先順位を付け、リスク評価で得られた科学的根拠に基づき有効と考えられる施策を選択する。リスク評価では、危害要因(ハザード)となる化学物質や病原微生物等の特性、体内動態、毒性、疫学、分析・サンプリング法、汚染分布、食品摂取量、並びに国内外の既存のリスク評価結果など、入手できる多様な科学的情報をもとに総合的に検討した上で結論が出される。その際、迅速性、情報の質(信頼性、妥当性等)の判断能力、様々な分野の専門家が互いの情報や知見をわかりやすく説明しあうコミュニケーション能力が要求される。従って、食品安全のレギュラトリーサイエンスで係わる専門分野や求められる能力は非常に幅広いのが特徴である。<br>現在の所属部は、食品安全上の問題の特定、行政施策の選択及びリスク評価に必要な情報の調査や集約を日常業務としており、一つの専門分野に限定せず物事を包括的に捉える広い視野が求められている。また、各種分野の専門家と情報交換を行う一方、専門家ではない行政担当者に分かりやすく説明する能力はもちろんのこと、一般市民に対しても科学的知見を分かりやすく伝えるという能力も必要となる。本発表では食品安全のレギュラトリーサイエンスとは何か、その従事者に求められることは何かを説明したい。

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