著者
関野 祐子 諫田 泰成
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.S1-6, 2015

オールジャパン体制でのヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究への取り組みの中、研究成果の出口としてiPS細胞の創薬応用に対する関心が近年急激に高まっている。特に、医薬品の安全性評価法の開発が期待されており、政府の「健康・医療戦略」には「新薬開発の効率性の向上を図るため、iPS 細胞を用いた医薬品の安全性評価システムを開発する。」と掲げられている。<br> ヒトiPS細胞由来の分化細胞は、誘導条件、培養条件などの違いにより異なる薬理学的特性を示すために、学術論文発表データだけからでは安全性評価法への応用可能性を判断することは難しい。分化心筋細胞は、種々のiPS細胞由来の組織細胞の中でも最も創薬プロセスへの実用化が早いと期待されているが、実際に利用可能かどうかの判断を行うには、多施設間で再現性を確認した頑健な実験プロトコルを用いた検証実験が必須となる。そのためには催不整脈性リスクを評価するための客観的指標を定め、評価法を決定しておくことが必要である。そして、催不整脈性リスクの陽性化合物と陰性化合物により予測性を検証する。<br> 我々は、平成24年度から「ヒトiPS分化細胞を利用した医薬品のヒト特異的有害反応評価系の開発・標準化」研究にとりかかり、多点電極上に高密度に培養した心筋細胞シートを使った実験プロトコルよる実験結果の再現性を検証し、現在多施設大規模検証実験に取りかっかっている。<br> 米国ではICH E14の廃止とICHS7Bの改訂の議論がすでに開始されているが、S7B改訂の科学的根拠を提出するために、Comprehensive in vitro Proarrythmia Assay (CiPA)という日米欧規制機関による国際研究チームを結成している。我々は、科研費研究班を中心に、Japan iPS Cardiac Safety Assessment (JiCSA)を結成して、CiPAと協調している。昨年夏から急激に激化した心臓安全性薬理試験法改訂に関する国際開発競争に対応し、日本の技術のグルーバル化と日本の分化細胞を海外に展開するための研究の強化が望まれる。

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