著者
藤森 克彦
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.78-111, 2016

<p> 本稿では、40 代・50 代の未婚の男女を「2人以上世帯」と「単身世帯」に分けて、生活実態、未婚者における2人以上世帯の規定要因、老後リスクとその備え、現在及び老後の生活不安、を考察した。特に、2人以上世帯に属する中年未婚者――中年未婚者の6割を占める――の生活実態などは、これまであまり考察されてこなかった。本調査では、以下の点が明らかになった。</p><p> 未婚者が属する2人以上世帯の構成をみると、未婚者の9割強は親と同居している。</p><p> 2人以上世帯の未婚者は単身世帯よりも正社員の比率が低く、無職者の比率が高い。また、2人以上世帯の未婚者は単身世帯よりも低所得者の比率が高い。</p><p> 一方、未婚者が属する2人以上世帯の「生計維持の中心者」をみると、未婚男性の4割、同女性の7割弱が生計維持の中心者は親となっている。特に、本人年収100 万円以下の未婚者では、その7~8割は親が生計維持の中心者である。</p><p> 住まいの状況をみると、単身世帯の6割強が「借家住まい」なのに対して、2人以上世帯では男性の5割強、女性の7割弱が「親の持ち家」に住んでいる。</p><p> 次に、未婚者について2人以上世帯の規定要因を分析すると、①年収が低いこと、②家族に要介護者がいること、③職場で社会保険に入れないこと(女性のみ)、があげられる。</p><p> 老後への備えをみると、2人以上世帯に属する未婚者の6割強は国民年金加入者(第1号被保険者)であり、厚生年金に加入していない。単身世帯の同割合は5割程度である。</p><p> 国民年金加入者で借家住まいの人は単身世帯の3割、2人以上世帯の1割程度である。</p><p> これらの世帯の場合、老後の公的年金は基礎年金のみであることが想定されるので、高齢期に家賃負担が重くなる可能性がある。</p><p> 2人以上世帯の未婚者は親などと同居しているので、経済援助や看護・家事などで「頼れる人がいない」という人の比率は低い。しかし、老後は親などの同居人が死亡する可能性があるので、「頼れる人がいない」という人の比率が単身世帯に比べて著しく高まる。</p>

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 中年未婚者の生活実態と老後リスクについて「親などと同居する2人以上世帯」と「単身世帯」からの分析(藤森 克彦),2016 https://t.co/t0RDcCVdub

収集済み URL リスト