著者
大庭 朋洋
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.144-146, 2017
被引用文献数
4

<p>紙製品への虫の混入は,歩留まりの低下や製品クレームにつながる問題として重要である。こうした中,製紙関連工場では様々な防虫対策を実施するが,その対策の効果が感じられない工場もある。このような工場では,どのようにして製品に虫が混入するか(混入シナリオ)を良く検討しないまま,手の付けやすい対策のみを場当たり的に実施していることが多い。対策を効果的にするためには,①製品への虫の混入シナリオを科学的根拠に基づき検討し,②製品への混入リスクの大きさに基づいて対策の優先順位付けをすることが,重要である。</p><p>混入シナリオの検討には,まず製品への混入状況の分析が必要である。次に,混入の分析結果を基に製造現場の問題点を絞り込み,調査していく。これら分析や調査には,担当者の経験やトレーニングが必要である。同時に,混入シナリオを支えるデータは科学的で客観性があることが必要であり,調査には気流や紫外線などの混入に影響する要素を測定する各種機材も用いられる。さらに弊社では,遺伝子による虫の同定技術,複数の混入要因を同時に測定するEMS-Qなど,従来にない強力な調査分析ツールを積極的に導入している。</p><p>対策への投資を効率的に活かすためには,混入リスクの分析に基づいて,優先順位を考えることが必要である。リスクは混入のしやすさを指標に,過去の混入実績,虫の特性や生息状況,製造工程の曝露性,検出性などの観点で評価することで,取り組むべき順番を合理的に決定することが可能である。</p>

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