著者
福島 可奈子
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.5-24, 2017

<p>【要旨】</p><p>鶴淵幻燈舗は、明治期に文部省の委託で初めて西洋幻燈を製作・納品し、その後の幻燈の普及に多大な影響を与えている。しかし鶴淵幻燈舗の事業の実態については、現存史料が少ないために、先行研究では断片的にしか明らかにされてこなかった。本論は、近年新たに発見された鶴淵幻燈舗発行の機関誌をも参照しながら、同舗の製造・宣伝・販売事業と、販売先のひとつである博文館の雑誌『少年世界』が主宰するお伽幻燈隊の活用方法について検証し、「通俗教育」事業としての幻燈と諸メディアのつながりの一端を明らかにしようとする。なぜなら同舗製作の幻燈は、近代国家としての「国民」の形成を目指していた明治政府にとって必要不可欠な教育ツールと目されたからであり、また明治期は現在考えられているような概念やメディアが定着・分離する以前であり、写真、幻燈、児童雑誌など多様なメディアが混在していたからである。そして「通俗教育」の名のもとにそれを横断する形で、鶴淵幻燈舗の製造・販売事業、お伽幻燈隊の受注事業があった。本論では、メディア考古学の観点から、メディアの多様性と相互の連関に注目するとともに、従来等閑視されてきた幻燈の実際面、製造・販売者や使用者の視点からの、技術的側面や具体的使用例を検討しつつ、明治期の「教育」現場での、他メディアとのつながりをも含む幻燈の果たした役割を明らかにする。</p>

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