- 著者
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村尾 泰弘
- 出版者
- 法と心理学会
- 雑誌
- 法と心理 (ISSN:13468669)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.12-18, 2016
筆者の非行少年理解の基本は、非行少年を「加害者でありながら被害者意識が強い少年たち」と捉えることである。本稿では、自閉症スペクトラム障害(ASD) の非行について、この考え方を基本に、ASD の障害特性を加味して理解することを検討した。非行少年の理解と対応においては、被害者意識・被害感の理解・共感が不可欠となる。ASD の少年においても、このことが当てはまる。その少年の人生における被害感を共感的に理解することが重要なのである。その場合、ASD の人たちは認知的共感性は低いかもしれないが感情的共感性は高い( 健常者と遜色がない) という特性に着目し、いわば感情的共感性を窓として、ASD の非行少年にアプローチすることを検討した。非行のないASD の青少年と非行を有するASD の青少年の違いは、被害感の集積の有無がこの2 つを分ける要因になっている。筆者は被害感の集積を理解していくことの重要性を指摘した。それらの理解が深まれば、一見、奇矯で猟奇的な動機もある程度理解できるものになる可能性がある。