- 著者
-
滝島 雅子
- 出版者
- NHK放送文化研究所
- 雑誌
- 放送研究と調査
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.26-45, 2018
放送における美化語の適切な使用の方向性を探るため、今回は情報番組の『あさイチ』を対象に、放送場面の美化語の使用を観察し、それぞれの具体的な美化語について、実際の発話者であるアナウンサーとそれを受け止める視聴者双方の意識を質的に探るインタビュー調査を実施した。本稿では、インタビューの具体的な声を交えながら、アナウンサーの美化語の使用意識とそれを受け止めたときの視聴者の印象を分析する。▽アナウンサーは、番組の場面ごとに人間関係や場にさまざまな配慮をし、自己や対象事物の効果的な見せ方を考える中で、美化語を使用したり控えたりしている。▽美化語を使うかどうかの判断には、アナウンサー自身の使用傾向や社会の慣用が影響している。▽視聴者はアナウンサーによる美化語をおおむね好意的に受け止めている一方、「お」の付け過ぎや、逆に語によっては「お」を付けないことへの違和感を持つことがあり、その意識は性差と強く結びついている。▽全体的に視聴者が放送に美化語を期待する気持ちは強く、アナウンサーもそれに応えようと、情報番組では美化語を多用する傾向にある。一方で、過剰敬語は避けるべきだという規範意識から美化語の乱用を避け、全体として適切な使用を保っているといえる。