- 著者
-
滝島 雅子
- 出版者
- 計量国語学会
- 雑誌
- 計量国語学 (ISSN:04534611)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.6, pp.315-330, 2020-09-20 (Released:2021-09-20)
- 参考文献数
- 17
本研究は,『日本語日常会話コーパス』(CEJC)モニター公開版と『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)のコアデータを用いて,話し言葉と書き言葉における敬語名詞(接頭辞「お」/「ご」が付いた名詞)の使用傾向を比較分析したものである.分析の結果,1)敬語名詞は,CEJC・BCCWJともに,尊敬語・謙譲語に比べて美化語の使用頻度が高く,両データを比較すると,CEJCのほうが美化語が使われやすく,尊敬語や謙譲語はBCCWJのほうが使われやすいこと,2)尊敬語については,CEJCとBCCWJで高頻度語の項目に違いが見られること,3)謙譲語については,特にCEJCにおいて敬語名詞の頻度が低く,謙譲語の空洞化が示唆されること,4)美化語については,クラスター分析により,CEJC・BCCWJともに4つのクラスターが得られ,特に美化語の出現率が高い語群については,CEJCでは派生的な傾向を,また,BCCWJでは語彙的な傾向を示すことが明らかになった.