著者
滝島 雅子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.26-45, 2018

放送における美化語の適切な使用の方向性を探るため、今回は情報番組の『あさイチ』を対象に、放送場面の美化語の使用を観察し、それぞれの具体的な美化語について、実際の発話者であるアナウンサーとそれを受け止める視聴者双方の意識を質的に探るインタビュー調査を実施した。本稿では、インタビューの具体的な声を交えながら、アナウンサーの美化語の使用意識とそれを受け止めたときの視聴者の印象を分析する。▽アナウンサーは、番組の場面ごとに人間関係や場にさまざまな配慮をし、自己や対象事物の効果的な見せ方を考える中で、美化語を使用したり控えたりしている。▽美化語を使うかどうかの判断には、アナウンサー自身の使用傾向や社会の慣用が影響している。▽視聴者はアナウンサーによる美化語をおおむね好意的に受け止めている一方、「お」の付け過ぎや、逆に語によっては「お」を付けないことへの違和感を持つことがあり、その意識は性差と強く結びついている。▽全体的に視聴者が放送に美化語を期待する気持ちは強く、アナウンサーもそれに応えようと、情報番組では美化語を多用する傾向にある。一方で、過剰敬語は避けるべきだという規範意識から美化語の乱用を避け、全体として適切な使用を保っているといえる。
著者
滝島 雅子
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.315-330, 2020-09-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
17

本研究は,『日本語日常会話コーパス』(CEJC)モニター公開版と『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)のコアデータを用いて,話し言葉と書き言葉における敬語名詞(接頭辞「お」/「ご」が付いた名詞)の使用傾向を比較分析したものである.分析の結果,1)敬語名詞は,CEJC・BCCWJともに,尊敬語・謙譲語に比べて美化語の使用頻度が高く,両データを比較すると,CEJCのほうが美化語が使われやすく,尊敬語や謙譲語はBCCWJのほうが使われやすいこと,2)尊敬語については,CEJCとBCCWJで高頻度語の項目に違いが見られること,3)謙譲語については,特にCEJCにおいて敬語名詞の頻度が低く,謙譲語の空洞化が示唆されること,4)美化語については,クラスター分析により,CEJC・BCCWJともに4つのクラスターが得られ,特に美化語の出現率が高い語群については,CEJCでは派生的な傾向を,また,BCCWJでは語彙的な傾向を示すことが明らかになった.
著者
滝島 雅子 山下 洋子 塩田 雄大
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.54-72, 2019

2019年3月に行った「日本語のゆれに関する調査」について報告する。▶第1章では、「やる」のかわりに「あげる」を使う用法について取り上げる。「植木に水をあげる」「子どもにお小遣いをあげる」「ペットの犬にえさをあげる」に関しては、「おかしくない・使う」という人が7割を超え、誤用とは言えない状況になっている。▶第2章では、気象情報で使うことばについて調査報告を行う。気温の言い方を「〇ド〇ブ」と言うか、「〇テン〇ド」と言うかを聞いたところ、「○テン○ド」を選んだ人のほうが多いという結果となった。また、「0度より低い気温」を言う場合、「氷点下」と「マイナス」のどちらを使うかを聞いたところ、「マイナス」が多い結果となったが、放送で使うことばとしては、自分で言う場合に比べ「氷点下」が多かった。▶第3章の外国語・日本語をめぐる意識については、日本人の大多数は、「(一部の人を対象にした教育ではなく)日本人全体への英語教育」、「(外国人向けの日本語教育よりも)日本人自身の外国語運用能力を高める教育の重視」を望ましいものととらえており、「(英会話には)まったく自信がない」、「小学校での英語教育には賛成」、「日本語を話す外国人が多くなった」と思っていることが明らかになった。外来語が増えることに対しては、「日本語をあいまいにすることにつながる」という意見が5割程度、「日本語を豊かにすることにつながる」という考えが4割程度になった。若い年代ほど英語(および外来語)への親和性が高く、高年層ではその反対に日本語をより重視するような傾向が見て取れる。
著者
滝島 雅子 山下 洋子 塩田 雄大
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.54-72, 2019 (Released:2019-12-20)

2019年3月に行った「日本語のゆれに関する調査」について報告する。▶第1章では、「やる」のかわりに「あげる」を使う用法について取り上げる。「植木に水をあげる」「子どもにお小遣いをあげる」「ペットの犬にえさをあげる」に関しては、「おかしくない・使う」という人が7割を超え、誤用とは言えない状況になっている。▶第2章では、気象情報で使うことばについて調査報告を行う。気温の言い方を「〇ド〇ブ」と言うか、「〇テン〇ド」と言うかを聞いたところ、「○テン○ド」を選んだ人のほうが多いという結果となった。また、「0度より低い気温」を言う場合、「氷点下」と「マイナス」のどちらを使うかを聞いたところ、「マイナス」が多い結果となったが、放送で使うことばとしては、自分で言う場合に比べ「氷点下」が多かった。▶第3章の外国語・日本語をめぐる意識については、日本人の大多数は、「(一部の人を対象にした教育ではなく)日本人全体への英語教育」、「(外国人向けの日本語教育よりも)日本人自身の外国語運用能力を高める教育の重視」を望ましいものととらえており、「(英会話には)まったく自信がない」、「小学校での英語教育には賛成」、「日本語を話す外国人が多くなった」と思っていることが明らかになった。外来語が増えることに対しては、「日本語をあいまいにすることにつながる」という意見が5割程度、「日本語を豊かにすることにつながる」という考えが4割程度になった。若い年代ほど英語(および外来語)への親和性が高く、高年層ではその反対に日本語をより重視するような傾向が見て取れる。
著者
滝島 雅子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.26-45, 2018 (Released:2018-02-28)

放送における美化語の適切な使用の方向性を探るため、今回は情報番組の『あさイチ』を対象に、放送場面の美化語の使用を観察し、それぞれの具体的な美化語について、実際の発話者であるアナウンサーとそれを受け止める視聴者双方の意識を質的に探るインタビュー調査を実施した。本稿では、インタビューの具体的な声を交えながら、アナウンサーの美化語の使用意識とそれを受け止めたときの視聴者の印象を分析する。▽アナウンサーは、番組の場面ごとに人間関係や場にさまざまな配慮をし、自己や対象事物の効果的な見せ方を考える中で、美化語を使用したり控えたりしている。▽美化語を使うかどうかの判断には、アナウンサー自身の使用傾向や社会の慣用が影響している。▽視聴者はアナウンサーによる美化語をおおむね好意的に受け止めている一方、「お」の付け過ぎや、逆に語によっては「お」を付けないことへの違和感を持つことがあり、その意識は性差と強く結びついている。▽全体的に視聴者が放送に美化語を期待する気持ちは強く、アナウンサーもそれに応えようと、情報番組では美化語を多用する傾向にある。一方で、過剰敬語は避けるべきだという規範意識から美化語の乱用を避け、全体として適切な使用を保っているといえる。