著者
形田 夏実
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.189-204, 2016

本研究は,石川県金沢市において伝統野菜として生産される15品目の「加賀野菜」を事例に,それらの生産および流通の動向を分析することで,農産物のブランド化が小規模な都市近郊産地の生産振興にいかなる役割を果たすのかを明らかにした。15品目の生産・流通の動向を分析した結果,15品目は三つに分類できた。一つ目はブランド化が経済的役割を有し,生産農家の基幹的収入となっている品目であった。二つ目はブランド化が経済的役割を有しているものの,農家の基幹的収入となっていない品目である。この品目は生産農家の補完的な収入手段にとどまるが,希少性などを要因として北陸以外の地域にも出荷されていた。三つ目はブランド化の経済的役割が低く,農家の基幹的収入となっていない品目である。生産量の少なさと流通範囲の狭さは,金沢市という地域を単位として認定される加賀野菜の独自性を高めていると考えられる。

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