著者
柏木 恭典
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.135-148, 2017

<p>2007年,熊本慈恵病院に赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が設置されて以来,2015年末までに計125名の赤ちゃんが預け入れられている。これを契機に,匿名のSOS相談や赤ちゃんあっせんなど,緊急下の女性(Frauen in Not)とその子(胎児ないしは新生児・乳児等)を支援する動きが強まっている<sup>注1)</sup>。この一連の取り組みは,20世紀末にドイツで打ち出された「匿名出産(Anonyme Geburt)」,「匿名の子の預け入れ(Anonyme Kindesabgabe)」とそれに続く「赤ちゃんポスト(Babyklappe)に端を発している。</p><p>本稿では,まずドイツにおけるこの新たな匿名での母子支援の歴史を振り返りながら,そこでどのような議論があったのかを可能な限り詳細に描いていく。とりわけ90年代から00年代のドイツの実践者と研究者双方の見解を提示していきたい。そして,その議論を踏まえて,最後に「緊急下の女性」という視点から,我が国における匿名での母子支援のあり方について言及すると共に,望まない妊娠,人工妊娠中絶,妊娠葛藤相談,匿名・内密出産,赤ちゃんポストの問題を含む妊婦期~出産期の包括的な母子支援を実現するための具体的な提言を行う。</p>

言及状況

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