著者
大関 勇人
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.338, 2011

【はじめに】<BR>今回,当訪問リハにて脳出血重度左片麻痺,高次脳機能障害を呈した症例を担当する機会を得た.本症例では基本動作,移乗動作獲得と共に生活範囲の拡大を目指した.その経過について若干の考察を加えて報告する.<BR><BR>【症例紹介】<BR>58歳男性 脳出血後遺症(左片麻痺) 要介護3 高次脳機能障害像(左半側空間失認,易疲労性,易怒性,注意障害等)が認められる.キーパーソン.妻 2009年10月発症. 2010年6月自宅退院後,訪問リハ開始.<BR><BR>【初期評価】<BR>左片麻痺(Br.Stage上肢・手指I下肢II)感覚は表在・深部覚ともに重度鈍麻.机上テストは異常なし.動作時の左上下肢の忘れ著明.注意の持続困難や易怒性等が見られる.Barthel Index35点.<BR><BR>【経過】<BR>2010年6月,訪問リハ開始(週2回).ポータブルトイレ・ベッド等の移乗時転倒頻回.基本動作も介助量多い.基本動作,移乗練習中心にアプローチ開始.妻にも介助方法を指導した.<BR>易疲労性や注意持続困難のため,こまめな休憩や動作の反復練習を行った.動作時の左上下肢の管理や車椅子のブレーキのかけ忘れが見られたため,簡単な言葉で口頭指示するよう工夫した.その結果徐々にブレーキのかけ忘れが軽減,転倒の頻度減少.移乗動作が監視レベルに改善し,活動範囲も拡大した.<BR>2010年8月,ケアプランの見直しを行ない訪問リハの頻度を減らし1時間以上2時間未満の通所リハを導入した.<BR>2011年1月,車椅子ブレーキのかけ忘れはほぼ改善.左上下肢の管理も良好となる.その後再度ケアプランの見直しを行ない現在は週1回の訪問リハビリ.週4回のデイサービスを利用中である.四点杖歩行軽介助で10m可能.Barthel Indexは60点に向上.<BR><BR>【考察】<BR>本症例は重度の麻痺,高次脳機能障害の影響もあり動作獲得に時間を要した.具体的には,動作の反復練習や声かけなど中心にアプローチを行なった.また,同時に家族指導も行ないコミュニケーションを図った.この取り組みが移乗動作の改善・左側への注意力向上及び在宅生活の安定につながったのではないかと考える.<BR>生活の安定と共に,ケアプランの見直しを行い活動範囲の拡大を目的に通所リハを導入した.その結果,定期的な外出の機会増加や一定のリズムで生活を送ることにつながった.高次脳機能障害に対しては身体機能面のみでなく生活環境についてもアプローチを行う事が大切であると考える.<BR> 本症例は50代と年齢も若いため在宅生活の拡大を図るとともに社会参加の拡大も今後の課題である.今後も生活動作のアドバイスや家族指導などを継続して行ない生活をサポートする必要があると考える.

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@tos CiNii 論文 -  高次脳機能障害患者の生活範囲拡大を目指した一例:~事例報告を通じて~ https://t.co/ZxZfZ6BHLZ

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