著者
来 小 渡邊 彩子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.63, 2007

<B>【はじめに】</B><BR> 中国の教育は、2001年6月に基礎教育課程改革要綱が公布され、2005年には全国で完全実施することが目指された。この改革のねらいは、これまでの知識偏重を是正して生徒の興味・関心を重視すること、現代社会に密接にかかわる内容を取り入れることと、生涯学習に必要な基礎的知識・技能を獲得できるようにすることである。中国には家庭科は置かれていないが、家庭生活や健康増進については、小中学校のいろいろな教科で学ぶようになっている。経済成長が著しく少子化傾向の中国で、この言わば生きる力の育成が求められるようになった子どもたちの生活はどのようなものか。広い国土と多様な民族・文化をもつ中国の中で、筆者の出身地であり、生活がこれから急速に変化することが予想される少数民族のモンゴル人の中学生について家庭生活の現状を調査することとした。<BR><B>【方法】</B><BR> 内モンゴル自治区東部の左后旗にあるモンゴル民族初等中学校1,2年生167名(男子81名、女子86名)とその親を対象にアンケート調査を行った。調査内容は、日常生活領域として、衣食住の消費生活、家事分担などの家庭生活、家族との関係を設定して、質問項目を設けた。調査時期は2006年8月である。有効回答率は中学生98.2%、親61.8%であった。<BR><B>【結果】</B><BR>1.属性 生徒は自宅が遠いため85%は寮に入っており、週末に帰省する。居住地は農村(農村、鎮)81.5%、都市(誠市)18.5%であった。家族形態は核家族73.5%で拡大家族より多い。きょうだい数は2人が57.7%で最も多く、1人31.3%がこれに次ぐ。<BR>2.中学生は衣食住に関する家事によくかかわっていた。「食器を洗う」「洗濯をする」「部屋のそうじをする」「気候に合った服装を自分で決める」「子どもと遊ぶ」では女子の方が男子よりやっている割合が高かった。<BR>3.家事をする理由は「自分のことは自分でする」ためが最も高かった。一方、親が家事手伝いをさせる理由は「労働観を養うため」が最も高かった。親が子どもに身につけてほしいこととして「日常生活習慣」「周囲の人と仲良くする」「自分の考えを相手に伝える」が「学習」よりも高かった。<BR>4.衣服の不良品を購入した場合、そのままにする者が多かった。また、食生活では「安全性」「栄養」に関心が高く、「低農薬」や「添加物」への関心は低かった。<BR>5.家族との団らんは「テレビを家族みんなで見る」と「会話をする」の割合が80%と高かった。また、悩みの相談は父母が最も高かった。<BR> 内モンゴルの家庭では家族の協力やコミュニケーションはよく行われている。日常生活の消費の問題についてはまだ関心が高くなく、これからの課題であろう。

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