- 著者
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床次 眞司
- 出版者
- Journal of Radiation Research 編集委員会
- 雑誌
- 日本放射線影響学会大会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, pp.10, 2007
過去30年にわたり、ラドンは自然放射線源の中で最も線量寄与の大きいものと認識されてきた。最近の研究でも、200Bq m<SUP>-3</SUP>以下の低いレベルで屋内ラドン濃度と肺がんリスクに正の相関があることが示された。世界保健機構(WHO)が2005年1月に立ち上げた国際ラドンプロジェクトでは、ラドンは地球規模の疾病負荷で、喫煙に続き2番目の肺がんの原因とされており、世界的に多くの国でこの問題に取組んでいる。一般に住居内ラドンはICRP勧告に基づいてラドン濃度200-600Bq m<SUP>-3</SUP>の対策レベルで規制される。200Bq m<SUP>-3</SUP>以下の低いレベルでの肺がんリスクに関する新しい知見を受けてWHOはラドン被ばくに関する新ガイドラインの勧告を計画しており、その対策レベルは以前よりも低いレベルに改定される予定である。新しいガイドラインが制定されれば、必ず屋内ラドン濃度調査が行われることになろう。ラドン濃度の測定データはその信頼性の観点から十分に保証されなければならない。ラドン測定には、アルファトラック検出器、活性炭キャニスター、エレクトレットなど多くの測定器が用いられる。このうちアルファトラック検出器やエレクトレットは年間平均ラドン濃度を得るための大規模で長期間の調査に適しており、疫学調査にも使用されている。測定器は一般にラドンチェンバーのような良く制御された環境下で校正される。しかしながら、Tokonamiはそれらのうちの幾つかはトロンに対して感度を有すると指摘した。この知見はラドン濃度指示値を過大評価する可能性があり、その結果肺がんリスクが過小評価されることを示唆している。本研究では、幾つかの典型的な検出器におけるラドン測定時のトロンの妨害、日本、中国、韓国、ハンガリーにおけるトロン濃度の概況、また疫学的視点からそれに関連したトピックを述べる。