- 著者
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中西 勉
松崎 純子
- 出版者
- 視覚障害リハビリテーション協会
- 雑誌
- 視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.55, 2009
【目的】:網膜色素変性患者が歩行する際に、何を見ているのかを言語報告してもらった。何を見ながら歩行をしているのか、そして目的物を発見する際のストラテジー検討した。<br>【被験者】:網膜色素変性患者8人(平均49.5歳)であった。両眼視による視力(logMAR)は0.5 logMARから1.4 logMAR、視野(左右眼それぞれ8方向の平均)は20.5°から3.0°であった。<br>【方法】:網膜色素変性の患者の歩行状況をアイマークレコーダーやビデオカメラで撮影し、どこを見ているのかについて言語報告してもらった。<br> 被験者は、近隣の小学校横の歩道を歩いた。交差点の右折、歩道橋の上り下り、交差点の横断を含む約250mのルートで、車道側は主に植え込み、学校側はフェンスや植え込みとなっていた。二つ目の交差点にある押しボタンを発見するまでの約110m部分を主な分析対象とした。<br> 言語報告のうち被験者が見た物や方向を抽出し、KJ法を用いて分類した。分析者は、歩行指導歴20年以上の2名であった。結果:被験者が見ているもには、ある程度の傾向があった。車道と逆側のフェンス、車道側の植え込みなどを見ており、それは進行方向を保つためと考えられた。しかし、その多くはフェンスなどであった。前方を見ているとの報告も多く、安全を確認するためと考えられた。また、目的物の信号機のボタンがある交差点を探すために、その方向を意識していることが伺えた。交差点のゼブラゾーンを見ていると報告する被験者もおり、数十メートル先から見ていた。交差点に接近してから信号機の柱あるいはボタンを探していた。<br>【結論】:フェンスなどを見ることで進行方向を保っていると考えられた。押しボタンのある交差点を比較的遠方から確認していることもわかった。 行くべき方向をおおざっぱに定め、そこに到着後、目的の物を探していると考えられた。